10月のマイナンバー(社会保障・税番号)制度の実質スタートに向けて、ITベンダーが次々とマイナンバー対応の商材を打ち出している。早急なマイナンバー対応が求められる「給与分野」で、課題となるのは従業員とその扶養家族からどうやってマイナンバーを集めるか、という点だ。
なかでも従業員規模が大きく、全国に多くの拠点を展開している事業者は、マイナンバーの収集に“工夫”が必要になる。また、パート・アルバイトが従業員の多くを占め、入れ替わりが激しい流通・サービス業などは、恒常的で、しかも頻繁にマイナンバーの収集が発生するので、紛失、散逸しないよう、マイナンバー収集の際の情報セキュリティをしっかり担保する仕組みの導入が強く求められる。
このマイナンバー収集部分について、ITベンダー各社はさまざまなサービスを打ち出しているが、とりわけユニークなのがキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)だ。同社はキヤノン製の既存の複合機にマイナンバーの収集機能をもたせる商材の販売を6月22日から始める。NTTデータなどはスマートフォンのカメラ機能を使って、10月以降に配布されるマイナンバーの通知カードと免許証などの本人確認書類を撮影し、オンラインで収集するというシステムの開発に取り組んでいるが、キヤノンMJは自社の複合機をマイナンバー収集に応用した。
キヤノン製の複合機同士ならば、データを暗号化して転送したり、読み取った通知カードや免許証といった個人情報のイメージデータをその場で複合機から消去する機能が備わっており「強固な情報セキュリティを担保できる」(キヤノンMJの蜂屋武司・BS直販統括部門特販営業部上席)と自信を示す。もちろんキヤノンMJグループ全体では、グループ各社が連携して、ユーザー企業に向けてさまざまなマイナンバー関連の商材やサービスを展開していく予定だが“キヤノンの複合機を活用する”という点は、まさに“キヤノンらしさ”を前面に出したサービスといえる。
従業員が事業所や店舗のパソコンから通知カードや免許証の写しを送る方法もあるが、これではパソコンにマイナンバーやイメージデータが残ってしまいかねず、個人情報の散逸のリスクが高い。この点、キヤノンの複合機は、機密性の高いイメージデータをセキュアに管理し、ネットワークで共有する機能が備わっているため、今回この機能を活用して、マイナンバー収集に特化したテンプレートの適用によるわかりやすいインターフェースを開発。キヤノンの複合機がある事業所から、イメージデータを各端末に残すことなく、セキュアにマイナンバー管理者へ送るという仕組みだ。(安藤章司)