
杉原博茂
社長兼CEO 日本オラクルは、2016会計年度(2015年6月~16年5月)の最重点施策として、「POCO(The Power of Cloud by Oracle)」というキーワードを打ち出した。これを合言葉に、クラウドビジネスのさらなる加速を目指す。商材ラインアップの充実だけでなく、販売促進のための具体的な体制整備にもすでに着手している。国内IT市場でのクラウドベンダーとしての存在感は、まだまだ大きいとはいえないが、クラウドへの“本気度”は、もはや疑うべくもない。(本多和幸、前田幸慧)
前回までいくつか紹介したようなSaaSの拡販に向けては、営業・ユーザーサポートに従事する人員を、新たに200人規模で採用する方針を明らかにした。SaaS事業は今年度、「マーケティングクラウド」「セールスクラウド」「サービスクラウド」「ERP/EPMクラウド」「HCMクラウド」という、それぞれの商材に特化した五つの統括本部を設置した。
オラクルにとってSaaS商材は、これまで強みを発揮してきたデータベース(DB)・ソフトや、ハードウェアのユーザーとは異なるユーザー層にも幅広く訴求し、顧客基盤を拡大するためのツールでもある。具体的には、新たに採用する200人の営業部隊を中心に、ユーザーの情報システム部門だけではなく、業務部門へのアプローチを強化する。また、全国7支社にもこうした人員を配置し、首都圏以外での顧客開拓も積極的に進める意向だ。
業務部門向けの製品対応にも本腰を入れる。業務部門でも直感的な操作ができて、スピーディーな導入が可能で、しかも十分な導入効果が期待できる事前設定済みのクラウド製品を、簡易パッケージとしてラインアップする。「IT技術者やIT組織をもたない年商100億円以上の中堅規模企業や大手企業の部門単位までオラクル・クラウドの営業範囲を拡大していく」という。
営業力の強化という観点では、大手企業向けの直販部隊を増強する方針を発表しており、まずは自社のリソースでクラウド市場でのプレゼンス向上を強力に推し進めたいという意向がみてとれる。それだけ、クラウドビジネスに“本気”だということだろう。
杉原博茂社長兼CEOは、6月30日の戦略説明会の場で、「日本オラクルは今年、創業30周年を迎えるが、2016年度を第二創業期と位置づけた。ラリー・エリソン(米オラクル会長兼CTO)から、『まったく新しい日本オラクルにつくり変えてほしい』と言われている。クラウドといえばオラクルといわれるように、認知度を上げたい」と話した。「POCO」を市場に示し、「2020年までにナンバーワンのクラウドカンパニーになる」という目標を達成するための基礎を築くことができるか。2016年度は、日本オラクルにとって勝負の年になる。