富士通のパブリッククラウドのIaaS/PaaS「K5」は、モバイル、ソーシャル、IoTなど、人やモノをつなぐ比較的新しい領域のシステムであるSoE（Systems of Engagementのインフラとしてはもちろんのこと、既存の基幹システムなどを指すSoR（Systems of Record）のクラウド化にも対応できるのが特徴だという。前回に引き続き、IaaSレイヤでの強みを掘り下げる。（本多和幸）

　K5は、オープンソースのIaaS基盤ソフトである「OpenStack」を採用している（PaaSも実行環境に同じOSSの「Cloud Foundry」を使っている）。しかし、中村記章・デジタルビジネスプラットフォーム事業本部副本部長は、「従来の企業の基幹システムをクラウドで動かすのに十分なセキュリティや堅牢性、データの機密性などをカバーできるレベルに、OpenStackそのものは至っていない。本当にOpenStackの純粋な機能でつくれるのは、小規模な企業内のクラウドくらいが限度」とOpenStackの課題を指摘する。そこで富士通は、「エンタープライズのSoRに対応するために、OpenStackをコアにして、周辺をいろいろとつくりこんだ」のだという。

　その「つくりこんだ」部分の代表例が、「マルチアベイラビリティゾーン」だ。1か所のデータセンター（リージョン）内で、複数の物理的に完全に独立した環境を提供するという機能により、「SoRに必要な冗長構成をしっかりと組むことができるようにした」と、中村副本部長は胸を張る。さらに、データセンター間でも、相互のデータの保全性を高める仕組みを構築したという。SoRをクラウドで運用する際の「安全・安心」に対するニーズに、多方面から応えようとしている。

　さらに、前回少し触れたオートスケール機能についても、特徴を詳しくみてみる。中村副本部長は、他のクラウドサービスのオートスケールとの違いについて、次のように説明する。

　「これまでのオートスケールは、単にピークが何月何日に来るから、そこに向けて前日にCPUを足しておこうとか、そういうレベルだった。しかしK5は、リアルタイムにいまの状況を監視したなかで、必要なリソースを充当できるようにしている。具体的には、IaaSのレベルだけではなくて、アプリケーションの実行状態をその上のPaaSのレイヤで監視している。アプリケーションのレスポンスが低下した時に、CPUが足りないのか、メモリが足りないのか、あるいはどこか他のところでボトルネックが発生しているのかを自動判別して、それに応じたリソースを提供できるようにしている。従来のSEの業務のノウハウをサービスの中に埋め込んだわけだが、利用者にはそれを意識しないで使ってもらうことができる」。