日興通信のマイナンバー(社会保障・税番号)制度対応へのアプローチは、社会保険の労務管理システムを切り口としたものだ。同社は社会保険労務士(社労士)向けの業務システムを手がけており、「マイナンバーは社労士の業務と密接不可分の関係にある」(日興通信の横山博光・業務パッケージ営業推進課長)ことに着目。従来の社労士向け管理システムを全面的に刷新することで、社労士のみならず一般企業のマイナンバー管理にも活用できるようつくりなおした。

「らくらくe社労」の画面イメージ
マイナンバーに対応した新版・社会保険労務管理システムの名称は「らくらくe社労」で、従来の社労士業務を引き継ぐとともに、広く民間企業での社会保険や労働保険、労災申請などの業務で活用できる。もちろん、こうした社会保障に関わる業務は、原則としてマイナンバーと紐づけることが求められているため、「らくらくe社労」では「マイナンバーの保管や利用、廃棄といった管理機能も実装」(浅井智子・営業企画課主任)。保管にあたっては自動的に暗号化したり、マイナンバーを利用した操作履歴も残るため、情報セキュリティ面でも国のガイドラインに準拠させた。
日興通信のビジネスにとって重要なのは、これまで社労士という限られた市場での商品だった商材を、マイナンバーをきっかけとして広く一般企業向けの商材につくり替えた点にある。同社は全国29か所の営業拠点をもつ“営業に強いSIer”として評価が高く、「らくらくe社労」の営業に関しても、足下の引き合いや受注状況の割合は、社労士向けが3~4割、一般企業向けが6~7割で推移している。当初の狙いどおり、一般企業向けの商談が堅調に推移していることから、向こう1年で社労士事務所、一般企業の両方を合わせて、200件程度の案件獲得の手応えを感じている。
「らくらくe社労」では、基本となる社会保険関連業務のシステムに加えて、労働保険事務組合などの団体業務に対応した機能、さらに社労士事務所の顧問先(顧客企業)の給与計算機能を備えており、「幅広い顧客層にアプローチしていくことで受注増を目指す」(業務パッケージ営業推進課の井上大祐氏)と鼻息が荒い。マイナンバー制度の導入をきっかけとして、実質的に新規ビジネスとなる「らくらくe社労」事業の拡大につなげているのだ。
国の電子申請システム「e-Gov」にも対応しているため、「総務・管理部門の人手が限られている中堅・中小企業からも高い評価を得ている」(横山課長)と、「らくらくe社労」を通じて、種々の申請業務の工数削減に役立つことも大きなセールスポイントになっている。(安藤章司)

写真右から日興通信の浅井智子主任、
横山博光課長、井上大祐氏