データセンター用ネットワークスイッチを専門に手がけるアリスタネットワークスが、売り上げを伸ばしている。「SDN」をキーワードに各社がさまざまなコンセプトを提唱するこの市場で、なぜ同社のスイッチがパートナーから支持されるのか。日本法人代表の朴文彦社長に戦略を聞く。(日高彰)

アリスタネットワークスジャパン
朴文彦
代表執行役社長 「従来のネットワーク製品はアドレスが動かないことを前提としていたが、現在のデータセンターではリソースの物理的な場所にとらわれない使い方の実現が求められている」
朴社長は、クラウド時代におけるネットワーク機器への要求をこのように説明する。データセンター内でどのラックに何が設置されているのかを意識することなく、アプリケーションが要求するリソースを、必要なときに必要なだけ割り当てる。データセンターの運用そのものにクラウドのコンセプトを適用していくような考え方だ。その実現のためには、データセンター内での通信量の増大に耐える広帯域のネットワークが必要なだけでなく、ネットワーク全体の可視化、管理の自動化、マルチベンダー間での連携が可能なオープン性などが求められる。
朴社長は、「『将来のデータセンターネットワークには何が必要か』を10年以上前から考え、クラウド時代のニーズを先取りした製品開発をしてきた」ことが同社の強みと話す。その戦略が最も端的に表れているのが、同社製品に搭載されている「EOS」と呼ばれるネットワークOSだ。これはLinuxをベースに開発されているが、Linuxカーネル自体には、カスタマイズを加えることなく構築されているので、オープンソースで提供されている管理ツールなどをそのまま利用できる。
また、大手ネットワーク機器メーカーは、自社開発したスイッチングチップを他社に対する競争力としてきたが、アリスタは専門メーカーがつくった最新チップの性能を引き出すソフトウェアの開発に注力したほうが、結果的に高い性能が得られると判断し、市場で調達可能な他社製の汎用チップを最初の製品から採用している。
クラウド時代のデータセンター市場にフォーカスし、Linux完全互換のOSと汎用チップを採用するという戦略があたり、アリスタの製品は先進的なクラウド事業者やウェブサービス事業者から高い評価を得た。企業による投資の軸足がオンプレミスからクラウドへと移るなか、高い性能と効率、運用・管理の省力化を実現できる同社のスイッチへの需要がますます高まっている。マイクロソフトは、Azureのサービスを提供するデータセンターにアリスタ製品を広く導入していることを明らかにしており、そのほかにも世界的な大手クラウド事業者で採用が広がっているという。
しかし、アリスタ製品のメリットは、一部の大規模データセンターでしか享受できないものではない。朴社長は「企業の『電算室』のような場所でも、リソースを最適化できるネットワークが必要になっている」と指摘し、マーケットに応じたソリューションを用意していく方針を強調する。(つづく)