8月発行の本連載第2回で紹介した「デジタルビジネスプラットフォーム(DBPF)」が、「MetaArc」というブランド名でついに世に出た。MetaArcを構成する製品群としては、同じく本連載でDBPFの核になるサービスとして紹介したパブリッククラウドIaaS/PaaS「K5」はもちろん、すでに提供が開始されているIoT専用のデータ活用基盤「FUJITSU Cloud Service IoT Platform(IoT Platform、図参照)」も主要サービスの一つとして名を連ねている。(本多和幸)
IoT Platformは、デバイスやセンサとアプリケーションの間のデータ送受信、さらにはデータ蓄積、イベント判断とアクションなどを司るクラウド上のIoT共通プラットフォームのようなものだ。同社がIoT Platformならではの最大の強みと位置づけるのが、「セキュアなデータ管理や安定した高速配信でデータの利活用を支援できる」(大澤達蔵・ネットワークサービス事業本部IoTビジネス推進室シニアディレクター)点だ。
具体的にはまず、IoT Platform上に集めたデータ群に対して、アクセス権限を設定でき、複数社間でデータの共有や受け渡しをする際のセキュリティを担保している。さらに、IoT Platformの最大の差異化ポイントになるのが、富士通の独自技術である「ダイナミックリソースコントローラー」だという。一言でいうと、エンドポイントとクラウドの間の負荷分散技術だ。デバイスから発生するデータを収集・配信する場合、データをクラウド上のサーバーに集めて、そこで負荷分散するのが一般的だが、処理が集中して安定性に課題が出るケースも多かった。一方、データの発生源であるエンドポイントに近いゲートウェイでデータを処理すると、安定はするが、リアルタイムでイベントを捉えるのが難しくなる。大澤シニアディレクターは、この二律背反の課題を解決したことに胸を張る。「富士通は、エンドポイントとクラウド、さらには両者をつなぐ広域ネットワーク上でデータ処理を行うすべてのリソースを制御して、時々刻々、いろいろな条件をみながら処理を行う場所を自動最適化する技術をもっている。これを普通にやると、エンドポイントとクラウドの間で制御信号をたくさんやりとりしなければならなくなるが、この制御信号のやりとりや再計算処理を軽量化する技術を開発できたことが大きかった」。
富士通はこれまで、ダイナミックリソースコントローラーをベータ版として提供してきたが、来年2月末に、正式に新機能としてIoT Platformに搭載する予定だ。