「APC」ブランドのUPS(無停電電源装置)で知られるシュナイダーエレクトリック。UPSも引き続き堅調に推移しているが、電源、ラック、冷却、管理システムをトータルで提供できるという強みを生かし、ここ数年はデータセンター向け製品の売り上げを大きく伸ばしている。(日高彰)

シュナイダー
エレクトリック
松崎耕介
代表取締役
IT事業本部
バイスプレジデント フランスに本社を置くシュナイダーエレクトリックは、グローバルでの売上高が日本円にして3兆円を超える(2014年度は250億ユーロ)巨大企業である。業種としては電機メーカーに分類され、配電用などの電気製品の売り上げも依然大きいが、伸びているのは、エネルギー管理や施設オートメーションといったソリューションだ。
07年にはAPCを傘下に収め、製品ポートフォリオにUPSやサーバー冷却装置などを加えたが、それらを単体の製品として提供するのみならず、データセンター(DC)のエネルギー効率を高めるためのトータルインフラとして提案している。グローバルではビルの電力管理やインフラ業界向けの売り上げが大きいシュナイダーグループだが、日本市場ではIT事業を主力としており、DC向けソリューションは国内での最重要分野となっている。
今年1月、日本法人でIT事業を統括するポジションに就いた松崎耕介・代表取締役は、「東日本大震災以降の電気料金の高騰で、DC事業者はエネルギー効率に非常にセンシティブになっている」と説明。ここ数年新造されている大規模DCでは、エネルギー効率の最適化が最優先課題となっているが、前世紀に建てられた電算施設では効率がほとんど考慮されていないことも多く、IT機器より空調設備のほうが多くのエネルギーを消費していることすら珍しくない。
そのようなDCが現代のニーズに対応するため、設備の全面更改に踏み切る時期が訪れており、ここでシュナイダーエレクトリックのソリューションが威力を発揮する。国内メーカーとの競合も発生するが、ラックなどのきょう体から、電源システムや冷却装置、それらを管理するソフトウェアのすべてを一社で提供できるベンダーは限られるため、トータル効率を重視する最近のDCでは、自ずとシュナイダー製品に注目が集まるようだ。最近では中規模DCのインフラ構築を丸ごと受注する案件が増えているという。
また、シュナイダー傘下に収めた後も継続してAPCブランドで提供しているUPSだが、こちらもまだまだ伸びしろがある。松崎代表取締役は「今後ITインフラはますます多くのデータを生成していくが、雷による瞬断などでデータが消失してしまってはIoTは成り立たない」と指摘。実際に、無線アクセスポイントや監視カメラなど、PCやサーバー以外の機器にUPSを取り付ける例が増えているという。
高度化・多様化する市場の要求に対応するため、同社では販売・構築パートナーとの関係構築にもあらためて力を入れている。具体的には、販売支援の強化と、新たな分野やこれまでになかった形態でのアライアンスを推進していく。(つづく)