データセンター向け製品の提供では9割以上、「APC」ブランドのUPS(無停電電源装置)はすべてがパートナー経由での提供であり、販売チャネルの役割を非常に重視しているシュナイダーエレクトリック。電源関連製品の適用分野が大きく広がっているのに対応し、従来とは異なる分野での協業を積極的に進めている。(日高彰)
シュナイダーエレクトリックでは、データセンター(DC)向けの電源関連製品に対する要求が多様化していることから、新たな分野でのアライアンスを積極的に拡大しており、ここ数か月の間だけでも新たなパートナーに関する発表を立て続けに行っている。
例えば今月、機械要素部品の大手メーカー・THKとの協業を発表し、THKの免震テーブルとシュナイダーのラックや空調機との間で搭載検証を行い、搭載に必要な部品を製品と合わせて提供する体制を整えた。最近のデータセンターでは建物自体で免震が考慮されているが、このような協業によって、古い施設や一般企業のサーバールームに対しても震災対応のシステムを提供できるようになった。
10月には、受配電機器メーカー・河村電器産業が製造販売するラック向けに、電力消費の監視・計測機能をもつPDU(ラック用電源タップ)の提供を開始した。受配電機器やラックといった同じカテゴリの製品を扱うという意味では、両社はライバルでもあったわけだが、より多くのユーザーに消費電力の可視化機能を提供し、DCの省エネ化に取り組むという考えから協業に至った。また、11月にはユニアデックスとの間で協業を拡大し、ユニアデックスがUPSの自営保守サービスを開始したほか、今後はリモートメンテナンスや資産管理などにも、サービスの提供範囲を広げていく方針が示された。DCやサーバールームの電力効率・運用効率を高めるには、管理の範囲を施設全体に広げる必要があり、今後も協業先は拡大していく見込みだ。

THKの免震テーブルに搭載したシュナイダーエレクトリックのラック 一方、これまで全国の情報機器販社を通じて販売している小型UPSについても、2016年は販売支援活動を強化する考えだ。シュナイダーエレクトリック日本法人の松崎耕介・代表取締役は、「医療や公共といった市場別の販売ノウハウや、当社がグローバルで有している導入事例などを、リセラー各社に活用いただきやすい形で提供していきたい」と話す。従来、各販売店に対しての支援は国内ディストリビュータを通じて行っていた。しかし、無線アクセスポイントや監視カメラなど、これまでUPSがあまり使われていなかった分野にも商機が生まれていることから、同社とディストリビュータが共同で、先進的な事例などの情報提供を行っていくとしている。
松崎代表取締役は、「『こういう新製品ができました』だけで売れる時代ではない」と指摘しており、技術的な優位性に加えて、同社のソリューションがユーザーにどのようなメリットをもたらすか、今後よりわかりやすい形で伝えていく意向を示している。