ネットワーク機器ベンダーのF5ネットワークスジャパン(古舘正清社長)は、サービス商材の拡充に合わせて、販路の拡張を意欲的に進めている。同社は情報セキュリティ分野を中心にサービス商材化を急ピッチで推進。これまでのネットワーク機器の“箱売り”型の商流では、商材の変化に対応しきれない部分が出てきたことから、パートナー網の再構築を進めているのだ。(安藤章司)

大塚順一
本部長代理 F5ネットワークスジャパンは、ロードバランサをはじめとするネットワーク機器をディストリビュータ(一次店)から販売店(二次店)へと流す商流を築いてきた。日本法人の規模が小さいときから、ディストリビュータの商品を流通させる力をフル活用して、シェアを大きく伸ばした実績を誇る。レバレッジ(テコの原理)を効かせ販売力を最大化させる仕組みだ。
しかし、この仕組みは機器販売では有効だが、近年、F5ネットワークスジャパンが意欲的に取り組んでいる情報セキュリティ領域を中心としたサービス商材には、応用が難しいという課題を抱えてきた。そこで、従来の機器販売のパートナー網を維持・継続させるとともに、サービス商材では、セキュリティ運用センター(SOC)などセキュリティ・サービスを手がけるサービスベンダーと、既存の流通網をうまく融合させることで、「物販とサービスの両方に対する顧客のニーズに応えられる販売体制」(F5ネットワークスジャパンの大塚順一・パートナー営業本部本部長代理)に再構築していく方針を示す。
まずは、F5ネットワークスジャパン自身が顧客先を積極的に訪問し、自社サービスを軸としたセキュリティ対策へのより具体的なニーズを探る。ニーズがつかめた段階で、例えば自社商材と連携可能なSOC系のサービスとの動作検証を行い、実際の販売では販売パートナーに活躍してもらうというシナリオだ。機器販売ではスペック(性能や仕様)で勝負する部分が多かったが、サービス系の商材は、顧客の課題を解決するアプローチがより強く求められる。このため、「顧客のニーズをしっかり聞き込み、パートナーのもっている資産や能力を組み合わせていくプロセスが重要」(同)だと話す。
とはいえ、サービス系の商材はF5ネットワークスジャパンにとって、まだ新しい領域であり、「具体的にどのようなニーズがあるのか明確化する」(同)ことを優先している。つまり、お目あての魚がいるかどうかわからない池に販売パートナーに突撃訪問せよとは言えない。魚がいることがはっきりしてから、さらにどうしたら釣果を出せるのかの手法まで確立させて、初めて販売パートナーを動員し、一気に刈り取る算段である。
F5ネットワークスジャパンでは、クラウド上でDDoS攻撃を防御したり、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)機能などを提供する「Silverline(シルバーライン)」シリーズをサービス商材の柱に位置づけており、商流を再構築することで販売増につなげていく。次号では実際にサービス商材を取り扱うパートナーの取り組みを紹介する。