SIerのシーエーシー(CAC)は、AI(人工知能)/ロボティクスを「新しい事業領域の有力候補」として位置づけている。同社は米国や仏国のロボティクス会社に一部出資し、彼らが開発中の最新のコミュニケーション・ロボットの情報をいち早く入手するポジションを得た。「AIが一段と進展すれば、それに呼応する新しいユーザーインターフェース(UI)が必要になる」(CACの池谷浩二・取締役イノベーションカンパニー長)と踏んだからだ。(取材・文/安藤章司)
CACの出資先は米Jibo社と仏ブルーフロッグロボティクス社の2社。いずれもスタートアップの会社で、コミュニケーション・ロボット(写真参照)を開発中で年内にも実機がCACのもとに届く見込み。家庭においては留守番をしたり、家族間の伝言を預かったり、ウェブで調べ物をして教えてくれたりする機能が想定されている。職場で使う場合は、情報共有や営業支援系の業務システムとつないで、チームのコミュニケーションの活性化に役立つことが期待されている。前号の野村総合研究所(NRI)の取り組みでレポートしたように、AIの大きな特徴の一つに人間の日常会話に溶け込める点が挙げられる。コミュニケーション・ロボットは、文字通り会話をするためにつくられた新しいUIというわけだ。

米「Jibo」(右)と仏ブルーフロッグロボティクスの「BUDDY」 興味深いのは、新しい事業領域への進出の背景には、CACが独自に開発したソフト開発の自動化や効率化を実現する開発基盤「AZAREA(アザレア)」も少なからず影響を与えている点である。今、池谷取締役とともにAI/ロボティクスを担当している鈴木貴博・執行役員AI&ロボティクスビジネス部長は、AZAREAの開発責任者を経験してきたキャリアの持ち主。AZAREAによって開発工数やコストが減る分、顧客のIT予算は確実に浮く。その浮いた予算を「今後、ますます有力になるだろうAI/ロボティクス領域に投資してもらう」(鈴木執行役員)狙いもある。

シーエーシーの池谷浩二取締役(左)と鈴木貴博執行役員 つまり、顧客の既存のIT予算に上乗せして投資を強いるのではなく、AZAREAによってコスト削減して、既存の予算範囲内でAI/ロボティクス領域への投資を誘う戦略をとる。顧客からすれば既存の予算内で新しいことに挑戦できて一石二鳥となる。CACはAZAREAを前面に押し出すとともに、海外のロボティクス・スタートアップからノウハウを採り入れ、間髪入れずに“新しいこと”を顧客に提案。顧客とのつながりをより太くすることでビジネスを伸ばす方針だ。