ここに注目!ニッポンのパートナー戦略
<ここに注目!ニッポンのパートナー戦略>第37回 日本通信(下) SIMの発行で世界とセキュリティを制す
2016/06/23 16:04
週刊BCN 2016年06月20日vol.1633掲載
これまでMVNO(仮想移動体通信事業者)として事業を展開してきた日本通信だが、最近はモバイル通信サービス事業に進出する他社を支援する「イネーブラー」としての動きを活発化させている。そして今後の方向性として、独自のSIMカードを発行し、高度なセキュリティやグローバルサービスの実現というビジョンを描いている。(日高 彰)
日本通信では、ISDNサービスの終了に伴うモバイル専用線の需要増を見込んでおり、前回紹介したように、複数の携帯電話ネットワークを利用可能なモバイルルータを発売している。NTTドコモが使えないときにはソフトバンクモバイルへといった具合に通信キャリアを切り替えることで、クレジットカード決済端末やATMなど高い可用性が求められる情報システムに、低コストかつ信頼性の高い通信インフラを提供しようとするものだ。
複数のネットワークを利用する場合、現在の仕組みでは接続先の携帯電話キャリアごとに個別のSIMカードが必要となる。MVNOが独自の加入者管理装置を設置して、携帯電話キャリアのネットワークに接続することが認められていなかっため、SIMカードの管理もキャリア側に依存せざるを得なかったからだ。しかし今年5月、総務省はMVNOに関するガイドラインを改正し、加入者管理などの各種機能をMVNOに解放するよう、携帯電話キャリアに求める方針を打ち出した。この制度改正によって、MVNOによる独自SIMカードの発行や、定額音声通話、NFC決済などのサービス提供にも道が開かれた。日本通信では今年末をめどに、規制緩和後の環境を利用した新たなサービスを提供したいとしている。
ただし同社では、こうした各種新機能を自社のサービスとしてユーザーに直接販売するのではなく、今後は他のサービス事業者やSIerと協業し、パートナー経由で提供する「モバイル・ソリューション・イネーブラー」に事業形態をシフトしていく考えを示している。福田尚久社長は、「通信はあくまで部品であり、完成品ではない。パートナーが実現したいことのために、黒子としてモバイルサービスを提供するのがわれわれの役割」と強調する。
例えば、1枚のSIMカードで国内の複数のキャリアに接続できるだけでなく、世界各国の現地キャリアに対応し、地球上どこからでも本社のデータセンターに閉域で接続できる「グローバルモバイル専用線」のサービスも、独自SIMカードの発行により可能となる。
また、SIMカードは複製が困難なので、デバイスの認証手段としても強力だ。ID・パスワードは認証方法としてはぜい弱であり、電子証明書はOSやアプリケーションの変更に対応できない可能性がある。これからあらゆるデバイスがネットワークにつながるIoT時代を迎えると、ネットワークの入口部分で不正な端末の接続をシャットアウトできるSIMカードを握る者が、セキュリティプラットフォームの提供者として非常に重要な位置を占めることになる。
福田社長は、「インターネットの成長がありながら、現在でも企業にとって基幹となるシステム、経済を支えるシステムは専用線で結ばれている。この専用線をモバイル化し、世界中どこにでも展開できるようになれば、日本企業の国際競争力も高まるのではないか」と述べ、パートナーとの協業によって新たなソリューションを生み出していく意欲を強調した。
これまでMVNO(仮想移動体通信事業者)として事業を展開してきた日本通信だが、最近はモバイル通信サービス事業に進出する他社を支援する「イネーブラー」としての動きを活発化させている。そして今後の方向性として、独自のSIMカードを発行し、高度なセキュリティやグローバルサービスの実現というビジョンを描いている。(日高 彰)
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