今年2月、IBMはグローバルで提供しているパートナープログラム「IBM PartnerWorld」を来年1月に全面リニューアルすることを発表した。5月下旬に都内で開催された「Watson Summit 2016」のパートナーデーでは、国内のIBMパートナー向けに新プログラムの一部がより具体的に説明された。(日高 彰)
IBMは近年「CAMSS」(クラウド、アナリティクス、モバイル、セキュリティ、ソーシャル)を戦略成長分野に位置づけるとともに、Watsonをはじめとする「コグニティブ・コンピューティング」の事業展開を本格化しており、パートナープログラムの刷新もその動きに沿ったものだ。
他のITベンダーと同様、IBMのプログラムも販売実績の大きいパートナーをより上位のレベルとして認定し、充実した支援を提供する内容となっているが、来年からの新プログラムでは、売り上げに加えて「コンピテンシー」と呼ばれる専門知識の習得も上位レベル認定の条件に加えている。その分、トレーニングプログラムには充実を図り、従来は有償で提供していた研修のいくつかをエントリーレベルのパートナーでも無償で受講できるようにするほか、英語版しか用意されていなかったオンライン教育プログラムの日本語化も急ぐ。また、売り切り型の製品販売に比べてクラウドサービスは成約時の金額が小さいため、売上高の一時的な落ち込みが避けられないが、新プログラムではクラウドに関して取引額の5倍を実績としてカウントし、パートナーが上位のレベルを取得・維持しやすくする。

パートナー事業本部
猿渡光司
副事業部長 さらに、アナリティクス製品の導入にあたって、分析対象となるデータソースを提供したサードパーティや、システム構築には直接携わらないものの、顧客にIBMのソリューションを推奨したコンサルタントなどもIBMパートナーとして認定し、支援・還元を行っていく。日本IBMパートナー事業本部で事業戦略を担当する猿渡光司・副事業部長は、「クラウドやコグニティブを展開するにあたり、パートナーリングの形も変わっていく。直接の商流に入らない方も、パートナープログラムに加わっていただきたいと考えている」と説明。従来は、販売パートナーの営業力や技術力が成約の決め手になっていたが、今後は「このデータが使えるならWatsonを導入する」といった判断をする顧客も増えると見込み、販売以外の形でIBMと連携するパートナーを拡大していく考えだ。
また、箱売りからサービスへの事業転換を後押しする研修プログラム「BTI(Business Transformation Initiative)ワークショップ」の実施にも引き続き力を入れる。これはパートナーの経営層を対象として、スキル、人材、組織などビジネス変革のあらゆる課題を約2か月にわたって議論するもので、高度なコンサルティングサービスが無償で提供される一方、参加するパートナーは「変革の実行」へのコミットが求められる。最近ではとくに地方の中堅パートナーから申し込みが多いといい、IT投資が一時的に復調した今のうちに、次に何をすべきかを真剣に考えたいというベンダーが増えている様子がうかがえる。