ブログから発展したコンテンツ管理システム(CMS)の「Movable Type」を開発・販売するシックス・アパートが好調という。CMS市場ではオープンソースの「WordPress」が大きなシェアを握っているが、一定の品質が担保されており、ウェブサイトのコンテンツ部分に集中できる商用CMSも復権しつつあるようだ。(日高 彰)

古賀 早
代表取締役CEO
ウェブサイトの構築・運用に用いられるCMSとしては、オープンソースソフトウェアの「WordPress」が世界的に広く活用されており、いわばデファクトスタンダードの地位にある。WordPress同様にブログシステムをルーツとするMovable Typeを開発するシックス・アパートにとって今は厳しい市場環境ではないか、と同社の古賀早・代表取締役CEOに聞くと、意外にも「2年ほど前から、Movable Typeの販売が再び伸びるようになった」という答えが返ってきた。
確かに、無償で使用することができ、プラグインなどの資産が豊富なWordPressは圧倒的な支持を得ており、Movable Typeもじりじりとシェアを落とす時期を経験した。転機となったのは2014年。この年は「Heartbleed」や「POODLE」などと呼ばれる、ウェブのセキュリティをおびやかすぜい弱性が多数発見され、「ウェブサイトを構成するインフラも、継続的に適切な管理・運用を行っていかなければ危険」という考えが企業の間で浸透した。しかし、WordPressはオープンソースソフトであるゆえに、運用にはそれなりのスキルが求められる。CMSをバージョンアップするとテーマやプラグインの互換性が失われ、コンテンツの表示に支障をきたすケースもあり、ぜい弱性を含む古いバージョンのCMSが使われ続けているサイトは現在でも散見される。
もちろん、ユーザー自身がCMSを管理・運用できればそれに越したことはないが、対応できる企業ばかりではない。また、ウェブサイトの制作会社も、収益性の低いメンテナンス作業には十分な体制を確保できないことも多い。そこで、一定の品質が担保されており、開発元から公式のサポート情報が提供される商用CMSへ回帰する動きがあり、これまで実績を蓄積してきたMovable Typeが再び脚光を浴びているのだという。
シックス・アパートは01年に米国で創業したが、09年以降Movable Typeの開発は日本法人主体で行われていた。11年にはインフォコムが日本法人を買収し完全子会社とすると同時に、米国からMovable Typeに関するすべての知的財産権を取得し、名実ともに日本発のCMSとなっていた。さらに、今年6月には製品開発や意思決定の迅速化を目的に、経営陣と従業員によるEBO(Employee Buyout)を実施して独立。クラウド版Movable Typeや、サービス型CMS「MovableType.net」を新たな事業の柱とすべく舵を切った。
クラウドCMSは市場ニーズも高まっているといい、パートナーのビジネスの軸足をどのようにしてサービス型へと移していくかが目下の課題となっている。(つづく)