クラウドビジネス全国に拡大中!
<短期集中連載 クラウドビジネス全国に拡大中!>最終回 クラウドはどんどん進化する
2016/10/26 16:04
週刊BCN 2016年10月17日vol.1649掲載
IaaS/PaaSには、オンプレミスの代替との考えがある。それは間違いではないが、必ずしも正確ではない。クラウドサービスには、システムの構築や運用に役立つさまざまな機能が日々追加されていて、オンプレミス環境とは違った進化の道を歩み始めているからだ。クラウドに注力しているSIerは、その進化に対して敏感に反応し、自社サービスに反映している。一部では「クラウド化はこれから」との声があるが、一方で「クラウドの採用が当然」との声もある。この違いは地域格差ではなく、SIer格差といえそうだ。
フルクラウドであるべき
「2012年からAmazon Web Services(AWS)を活用しているが、今ではクラウドがあたりまえになった。クラウド以外の選択肢はない」と、ハンズラボの長谷川秀樹・代表取締役社長は語る。クラウドに注力しているためか、業界内の仲間からも同様の感触を得ているという。
ハンズラボは首都圏に本社を置いているため、地方よりも進んでいるのではないかとの見方もあるが、京都の本社を置くKYOSOも、クラウドへの強い流れを実感している。同社の辻一郎・事業開発室副室長によると、「ここ2年くらいでクラウドの採用があたりまえになった」とのこと。大分県に本社を置くイジゲンのエンジニア、平野文雄氏は、クラウドの採用が一般的になったとは言わないまでも「県内の大手企業はではクラウドを採用する傾向にあり、クラウドを採用していない企業でも、既存システムの減価償却のタイミングでオンプレミスからリプレースする準備をしている段階にある」と、県内の事情を語る。青森県に本社を置くヘプタゴンの立花拓也・代表取締役社長も、「県内の大手企業を中心に採用が進んでいる」と実感している。
採用が進むのは、クラウドのメリットに対する理解が深まったからだ。「クラウドの環境は、日々バージョンアップしていく。そのため、常に最新の環境を利用できる。オンプレミスの場合、買い直しやファームウェアの更新などをする必要があり、故障することも考慮しなければならない。クラウドであれば、そのレイヤの心配がない」と、ハンズラボの長谷川社長はサーバー環境のような基本的なインフラ部分だけでも、クラウドのメリットが圧倒的に大きいと実感している。
ITベンダー側にもメリット
KYOSOの辻副室長は、クラウドをユーザー企業が評価するポイントについて、「アジリティ(俊敏性)。早く失敗して、早く成功しよう。この説明が刺さる」という。例えば、IoT。事例は増えているものの、IoTの効果は未知数で、まだチャレンジ領域の側面がある。そこで、クラウドを活用してすばやくシステムを構築し、効果を測定する。だめなら、次のシステムを構築する。それを積み重ねることで早く成功する、との考え方が受け入れられやすいという。クラウドでIoT関連のサービスが続々と登場しているのも、こうしたニーズを反映してのことだと考えられる。
クラウドのメリットは、ITベンダー側にもある。イジゲンの平野氏は、「地方のSIerには、専任のインフラエンジニアがいない。専任として成り立つほどの案件がないためで、地方では兼任が求められる。結果、扱うことのできるインフラが限られてしまう。クラウドであれば、大手SIerと同等のインフラを扱うことができ、仕事の上限がなくなる。また、クラウドはスケールが容易なため、スモールスタートができるのも大きな魅力の一つ」とクラウドを評価している。
オンプレミスからの移行
普及期にはウェブ系やゲーム系での採用が多かったクラウドだが、徐々に業務システムなどが稼働するオンプレミス環境をクラウドに移す案件も増えている。「オンプレミスからクラウドへの移行は、2012年くらいから動き始めている。クラウドのメリットを経営者が理解すると進みやすい」とイジゲンの平野氏。
KYOSOの辻副室長は、「既存環境でパフォーマンスに限界がきていたケースで、AWSを採用してデータベースを『Amazon Aurora』に切り替えたところ、大幅なパフォーマンス改善につながった。しかも運用コストは月間数十万円。オンプレミスなら、ハードウェアだけで数千万になっていた」という移行事例を取り上げて、パフォーマンス面でもクラウドにメリットがあることを強調する。ERPなどの大型パッケージシステムがクラウド上で稼働するケースが増えたことも、移行を提案しやすくしているという。
オンプレミスからの移行にあたっては、「単純にクラウドに載せ替えるだけでは意味がない」と、ハンズラボの長谷川社長。「古いシステムでは変化のスピードについていけない」とし、システム刷新の重要性を説く。
オンプレミスからの移行が増えていることは、AWSのユーザー会「JAWS-UG」の参加者からも垣間見ることができるという。「最初は超アーリーアダプタが参加していた。最近は世代が替わり、企業の情報システム部門や大手SIerが増えてきた」と、エンタープライズ分野への広がりを実感している。
クラウドへの流れがある一方で、オンプレミスに注力するITベンダーも少なくない。どちらが正解とは言い切れないが、ハンズラボの長谷川社長はこう警告する。「いずれサーバーの設置が懐かしいと思う時期がくる。さっさとクラウドの流れに乗るべき。この業界、置いてきぼりになると大変なことになる」。
IaaS/PaaSには、オンプレミスの代替との考えがある。それは間違いではないが、必ずしも正確ではない。クラウドサービスには、システムの構築や運用に役立つさまざまな機能が日々追加されていて、オンプレミス環境とは違った進化の道を歩み始めているからだ。クラウドに注力しているSIerは、その進化に対して敏感に反応し、自社サービスに反映している。一部では「クラウド化はこれから」との声があるが、一方で「クラウドの採用が当然」との声もある。この違いは地域格差ではなく、SIer格差といえそうだ。
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