ブイキューブのテレビ会議システム「V-CUBE Box」が発売1年を迎え堅調な推移をみせている。リモコン操作で簡単に会議を始められる簡便さと、多拠点導入もしやすい低価格がユーザーに好評だが、ハードウェアとクラウドサービスを同時に売れる、販売パートナーにとってのメリットも見逃せない。(日高 彰)
ウェブ会議システムをクラウドサービスとして提供するブイキューブは、昨年10月にアプライアンス型のテレビ会議システム「V-CUBE Box」を発売した。本体、カメラ、リモコンなどを1パッケージにまとめ、わずかな操作ですぐに会議を始められるようにしたことで、専用機器を用いたテレビ会議システムと同じ感覚で簡単に設置・使用できるのが特徴だ。多拠点接続に対応したテレビ会議システムは導入に100万円以上の投資を必要とする製品が主流だが、V-CUBE Boxは同社が主力としているウェブ会議システムの技術をベースとしており、多拠点接続装置(MCU)が不要で1拠点30万円程度から導入できる。

間下直晃
社長
同社の間下直晃社長は、「IT業界にいると気づきにくいが、一般の企業でパソコンを使いこなしている人は半分もいないのではないか。パソコン用のシステムだけでは広がりに限界がある」と話し、テレビのリモコンを操作するような感覚で誰でも簡単に使える製品が求められていたと説明する。
V-CUBE Boxはハードウェア製品として提供される。「ソフトだけで使えて特別な機器は不要」というウェブ会議のメリットを訴求していたそれまでの戦略とは相反し、専用機器をベースとしたかつてのテレビ会議の世界に逆戻りする提案のようにもみえる。しかし、実際にはV-CUBE Boxを購入した顧客の多くがウェブ会議サービスの「V-CUBE One」も契約しており、結果として製品とサービスの両方が売れているという。
契約増を牽引する理由の一つが、モバイル機器の普及だ。V-CUBE Boxを導入し便利さを実感した企業は、出張先からの会議参加や在宅勤務などにもこれを活用しようと考え、モバイル機器からも接続できるV-CUBE Oneが必要になる。PCに詳しくない従業員でも、今では多くがスマートフォンの操作には慣熟しており、教育コストはほとんどかからない。
もう一つの理由が、既存資産との連携だ。V-CUBE Boxは、コストが理由で一部の拠点や会議室にしかテレビ会議を導入できなかった企業が、さらに台数を増やすために購入するケースも多いといい、その場合は既存のテレビ会議システムとV-CUBE Boxの相互接続が必要となる。この接続機能はV-CUBE Oneのライセンスに含まれているので、ハードウェアの販売に合わせてサービスの契約も進むというわけだ。
パートナーにとっても、導入時点でまとまった売りが立つハードウェア製品は扱いやすい商材だ。しかも、V-CUBE Oneというストック型の収益がついてくる。“箱売り”からサービスへの転換期にマッチした製品といえるだろう。