業務システムでもWi-FiやLTEなどの無線技術が当然のように使われる時代になったが、接続の安定性や管理・セキュリティの問題で、本来便利なはずの無線が業務の足かせになることは少なくない。これらの課題解決に向けて、昨年日本での営業活動を開始したネットモーションワイヤレスに販売戦略を聞いた。(日高 彰)
米国に本社をおくネットモーションワイヤレスは、モバイル通信の問題を解決する製品の開発・販売を2001年から行っている。無線ネットワークで業務を行う場合、通信が不安定な場所ではセッションが失われシステムへの再ログインが要求されたり、アプリケーションが停止してしまうことがよくある。携帯電話網と無線LANをまたいでネットワークが切り替わるときにも同様の問題が発生する。このようなトラブルが頻発すると、現場では端末の再起動などに時間を取られ、情報システム部門もサポート要請への対応で忙殺されるといったように、会社全体で生産性が低下してしまう。
エリック・ヘルムス・バイスプレジデントと
成田孝弘・日本支社長
ネットモーションの技術では、クライアント側とデータセンター側の両方からモバイルネットワークを監視し、一時的に接続が切れた場合も、アプリケーションに影響が及ばないように通信制御を最適化し、セッションを保持することが可能という。すでに欧米では、空港や港湾といった電波状況の悪い場所での業務や、病院や警察・消防といった緊急性の高い業務でモバイルアプリケーションを安定的に使うため、3500社以上の顧客が同社の製品を導入している。
アジア・ヨーロッパ地区のセールスを担当するエリック・ヘルムス・バイスプレジデントは「日本は一般消費者向けの市場ではモバイル先進国だが、エンタープライズのモバイル活用意向はやや保守的にみえる」と話し、日本は欧米に比べると企業によるモバイル導入は一歩遅れていたとの見方を示す。しかし、今後は加速度的に導入が拡大し、モバイルネットワークの特性に起因する問題に直面する企業が増えるとみている。
日本ではほぼ全国がLTEのサービスエリアとなっており、国際的にみても高品質な通信環境が整備されている。通信の安定化機能だけで同社製品に魅力を感じる顧客は限定的かもしれない。しかし、ネットモーションはセキュリティや可視化といった、現代の企業ネットワークの運用に不可欠な要素を揃えている。直接インターネットへ接続するか、あるいはVPNで社内ネットワークを経由するかといった通信経路を、アプリケーションごとに自動的に切り替えたり、携帯電話網での大容量の通信を禁止し、ソフトウェア更新は無線LANに接続中のみ行えるようにするなど、ポリシーに応じた細かい制御が可能だ。
北米、南米、欧州では、同社製品とパナソニックの堅牢タブレット端末「タフパッド」を組み合わせたソリューションなどで多くの受注を獲得しており、日本国内でもパートナーと組んだ付加価値提案によって顧客を獲得していく考えだ。(つづく)