NECが進めるデジタル産業革命の中核となるのが、ビッグデータ、AI、IoTだ。この三つのテクノロジーを使って、実世界とサイバーの世界を結び、社会価値創出を目指していきたい考えだ。この三つが同社のすべての事業領域にかかってくる重要な要素となる。(山下彰子)
NECが、全社の横断的な事業として、ビッグデータ、AI、IoTに取り組み始めたのは2013年。当時は「ビッグデータ戦略室」の名で、国内外で事業を展開した。
ビッグデータ戦略室では、大容量のデータを保存するストレージやプラットフォームなども担当していたが、そのなかで重点に置かれたのがビッグデータだ。このビッグデータ戦略室に所属していたデジタル戦略本部兼AI・アナリティクス事業開発本部の荒井匡彦シニアマネージャーは、「当初はデータの量にフォーカスをあてていた」と話す。やがてデータの量から、そのデータをいかに活用するか、つまり「アナリティクス(分析)に重きを置くようになった」(荒井シニアマネージャー)という。またここ3~4年で市場的にも、「AI」の言葉が浸透し始め、ビッグデータのアナリティクスをAIと置き換えるようになった。
AIの進化の歴史をみると、1956年に「推論・探索」の第一次AIブーム、80年に「知識表現」の第二次AIブームを経て、2010年には機械学習(マシン・ラーニング)・表現学習(ディープラーニング)の第三次AIブームが訪れた。この第三次AIブームの時期にNECもさまざまなAIを開発し、技術力を高めた。
AIの技術が向上すると、AIを用いて分析したビッグデータの価値が高まっていく。実世界のデータをIoTで吸い上げ、まとまったビッグデータをAIを使って分析し、IoTを用いて実世界に戻す。この一連の流れを、NECでは「デジタルトランスフォーメーション」とした。荒井シニアマネージャーは、「IoTでデータを吸い上げ、意味のあるデータにしてサイバーの世界にもってくることを『見える化』、見える化されたデータをもとに、予測を立てることを『分析』、予測結果によってどうすべきかをIoTに指示を出すことを『対処』として、この三位一体のプロセスでデータを活用し、社会価値を創出していく」としている。AIは、集めたデータに価値をもたせる重要な技術だ。次号ではNECがもつAI技術について紹介する。