IoTデバイスやセンサで収集したビッグデータを分析するAI。データを生かすも殺すもAI次第といえるだろう。日々、分析エンジンは高度化し、AIの技術は飛躍的に発展している。NECが開発したAI技術は、デジタル産業革命にどう貢献するのか。(山下彰子)
NECは、AI関連技術の開発を約半世紀にわたり進めてきた。強みである顔認証技術をはじめ音声認識、画像・映像認識、機械学習、予測・予兆検知などがある。これらの最先端のAI技術群を総じて「NEC the WISE」と名付けた。「The WISE」には「賢者たち」の意味があるという。
前号で紹介した実世界のデータをIoTで吸い上げ、分析し、IoTを用いて実世界に戻すデジタルトランスフォーメーションのプロセス、「見える化」「分析」「対処」に合わせ、「NEC the WISE」も三つに分類されている。今後、IoTやビッグデータとともに活用されるのが「分析」のAI技術だ。
NECは「分析」のプロセスに適したAI技術を数多く持っているが、そのなかで注目を集めているのは「異種混合学習」と「RAPID機械学習」だ。異種混合学習は、多種多様なデータのなかから精度の高い規則性を自動で発見し、その規則に基づいて、状況に応じた最適な予測を行う。予測の根拠をわかりやすく示すことができるのが特徴だ。
一方、RAPID機械学習は、特徴を自動で抽出しながら学習する。お手本データを学習させることで、判断モデル(法則)を自動生成する。ただ、異種混合学習と違い、予測を導いた根拠が分からないので「ブラックボックス」型のアプローチといわれる。
この二つの学習を例えるなら、子どもに猫の写真を何枚も見せたあと、猫と犬の写真を並べ、猫を選ばせる。これがRAPID機械学習に近い。猫の特徴、毛の色や耳やしっぽの形などの条件をあらかじめ設定し、この条件に合った動物の写真を選ぶのが異種混合学習である。この二つの学習はどちらがすぐれている、と比較するものではなく、AIと人間が協調して解く問題に関しては異種混合学習を、AIに任せられる問題や正解が明らかな問題はRAPID機械学習を、というように使い分けることが重要になる。
デジタル戦略本部兼AI・アナリティクス事業開発本部の荒井匡彦シニアマネージャーは、「店舗などの発注業務には異種混合学習が、画像や音声認識にはRAPID機械学習が適している。これまで人がやっていた作業をAIが補完することで、効率が上がる。そしてそれがデジタル産業革命に貢献する」と語る。