AI技術を導入し、活用する事例が増えている。ソフトウェアパッケージとして販売している「RAPID機械学習」は、すでに他社のシステムに組み込まれ、業務効率化、コスト削減に役立ち始めている。今回は政府、官公庁、公共機関、金融機関など、パブリック事業での事例をみていこう。(山下彰子)
NECのパブリック向け事例として、有名なのが、空港などに導入されている入国審査用顔認証システムだ。自動ゲートで読み取ったIC旅券の顔写真とゲートに備え付けたカメラで撮影した顔映像を照合し、リアルタイムで同一人物であるか判定する。この画像の照合にAIが使われているのだ。
同様に、カメラで撮影した画像をRAPID機械学習が分析し、業務の効率化に貢献している事例がある。それがNECと福田道路(新潟市、河江芳久社長)が共同で開発した「舗装損傷診断システム」だ。路面の映像をRAPID機械学習を使って分析することで、わだち掘れとひび割れを検出し、道路の状態を把握する。
これまでは道路管理業務のため、目視点検や専用の工具を使って路面の状態をチェックしてきた。舗装損傷診断システムでは、一般的なビデオカメラを取り付けた自動車で路面を撮影し、撮影映像を分析することで路面状況の劣化レベルを判定できる。路面の撮影と同時に記録したGPSによる位置情報を活用することで、地図データ上で路面状況の確認ができる。
デジタル戦略本部 兼 AI・アナリティクス事業開発本部 シニアマネージャーの荒井匡彦氏は「このシステムを活用することで、道路管理の業務が劇的に減った。また、深刻度を判定して補修の優先順位を付ければ、限られた予算、時間のなかで効率よく補修計画を策定できる」と話す。つまり、路面の状況を見える化するだけではなく、道路の補修計画の策定から補修工事の実施、評価までの一連の工程でも、AI技術を活用する。現在、舗装損傷診断システムは実証実験段階だが、2017年度をめどに実用化を目指している。
パブリックな分野で、AIを導入、活用することで、業務を効率化、迅速化し、人々の生活の安全をサポートすることができる。次回はエンタープライズ向けの事例を紹介する。