徳島県内の企業を対象にシステム開発を手がけてきた富士コンピュータサービス。近年は、四国全域へと顧客を開拓してきている。「一つの商談の規模が、年々小さくなってきている。県内だけでは厳しい」と、篠原千秋代表取締役社長は商圏の拡大に取り組む理由を語る。とはいえ、他県も地域のSIerがしのぎを削っている。篠原社長は、「企業にはさまざまなニーズがある。これまで培ってきた基幹業務システムのノウハウを生かしつつ、その他の部分は協業によって補完し、新規案件の獲得を目指す」としている。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 富士コンピュータサービス
所在地 徳島県徳島市
資本金 1500万円
設立 1982年
社員数 30人
事業概要 システムインテグレーション、ソフトウェア開発・業務分析、ネットワークメンテナンスサービス、サプライ販売
URL:http://www.fcs-wins.co.jp/
商談規模縮小に商圏拡大で対応
篠原千秋
代表取締役社長
富士コンピュータサービスの設立は1982年で、家具の製造・販売を手がける冨士ファニチアの電算部門が起源。同社グループの販売管理や給与管理といった電算システムのプラットフォームが、汎用機からオフコンに変わるタイミングで独立した。
「設立時は、売り上げの9割以上がグループ企業のシステム開発だったが、現在では1割程度。製造業を中心に、販売管理システムや生産管理システム、CADシステムなど、個別のニーズに対応してきている」と、篠原社長は現状について語る。製造業のほか、地元ケーブルテレビや自治体などもユーザーとして名を連ねており、地域に密着したSIerとして事業を展開している。
富士コンピュータサービスがこのところ注力しているのは、徳島から四国全域への商圏拡大である。そこには、ユーザー企業の数を増やすという狙いがある。
「自治体関連の案件は、市町村合併によって減ってきている。民間企業の案件も、この10年で商談規模が半分くらいに縮小している」と、篠原社長は危機感を抱いている。
案件規模が小さくなっている背景として、クラウドの影響が指摘されがちだが、基幹業務システムを手がける富士コンピュータサービスでは、オンプレミスのニーズが根強く、大きな影響はないという。商談規模の縮小は、リーマン・ショック時に投資を控えたことが影響しているという。また、クラウドについて、篠原社長は次のように分析している。
「クラウドかオンプレミスかはあまり関係ない。個人情報はクラウドに出さず、社内に置きたいなど、システムによって判断が分かれるところ。汎用的なパッケージシステムは、クラウド化が進んでいる」。同社のユーザーは、年商30億円までの中堅・中小企業が中心であることから、IT関連専任の担当者を置かない企業がほとんど。ユーザーニーズを考慮した適材適所の提案で、信頼関係を築いてきている。こうした同社の強みを生かし、四国全域への商圏拡大を推進している。
製造業も人手不足の時代
今後のビジネス展開を考慮するにあたり、篠原社長は商圏の拡大に加え、新たな分野への参入も視野に入れている。
「基幹業務システムの構築のニーズは、今後も変わらずある。しかし、これまでと同じことをしていたら、会社は衰退していく。ユーザー企業のIT活用のレベルは上がっているし、ITの適用範囲も広がっている。そうした動向やユーザーニーズに対し、手持ちの品揃えを増やすなど、柔軟に対応していかなければならない」。とはいえ、一社で対応するのは難しいため、協業を視野に入れたビジネス展開を模索している。例えば、画像系の処理に強いところと組んだシステムを提案するなど、すでに協業に取り組み始めている。
「IT業界はエンジニア不足が大きな課題となっていて、当社もエンジニアの確保に苦労しているが、製造業も状況は同じ。人材の確保に苦労している。そのため、製造業の経営層は、人材不足の解消策として、IoTや人工知能(AI)の活用に興味を示している」と篠原社長。そのため、富士コンピュータサービスとして何ができるかを模索しており、IoTやAIも視野に入れて取り組んでいる。
人材不足の解消策というわけではないが、富士コンピュータサービスは7月、富士通とともに働き方改革のセミナーを開催した。篠原社長は「働き方改革のソリューションは、クラウドやリモートオフィスといった説明しやすいものが多く、提案しやすい」と実感。まだ企業の反応は鈍いとしつつも、話題性があることから、新規顧客を獲得するためのドアノックツールとしても、働き方改革のソリューションに期待している。