富士通は今年2月、健康医療情報を起点とした全国で使える個人向けの統合管理基盤サービスを国内で初めて立ち上げた。同サービスを始めるに当たって影響を受けたのは、厚生労働省と経済産業省が合同で行っている「未来イノベーションワーキング・グループ」での議論だった。(取材・文/安藤章司)
未来イノベーションWGは、2040年に向けて人と先端技術が共生する未来の医療福祉分野の在り方を研究する活動で、今年3月に公表された同WGの中間取りまとめでは、健康医療の分野で誰もが支え手になり、ともに助け合う“ネットワーク型”が理想的な姿だと位置付けている。富士通では、この“ネットワーク型”のIT基盤として健康医療情報管理基盤サービスが役立ち、ビジネスにつながると見る。
まず、現行のおおまかな仕組みをみると、医師や看護師(供給側)が患者(需要側)にサービスを提供する方式となっている。未来イノベーションWGでは、国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になる40年には、需要に供給が追いつかなくなると予測。また、別の観点として、現行方式では健康医療に関する意欲や知識がある層は、積極的に健康医療サービスを活用して健康を維持する一方、そうでない健康無関心層は、半ば放置され、重症化が進みやすい構造にあると指摘している。
未来イノベーションWGが示すネットワーク型では、現行の医師や看護師といった専門職によるサービス提供の流れに加えて、ITベンダーや、血圧計や歯ブラシ、血糖値測定器といったデバイスメーカー、そして健康増進サービスを提供する事業者などの民間リソースを健康医療ネットワークの中に取り込んでいくことを想定している。
例えば、小型のウェアラブル端末で血圧や血糖値のデータを、富士通の健康医療情報管理基盤サービスのようなPHR(個人向けの健康記録サービス)事業者に送信し、さらにデバイスメーカーや健康増進サービス事業者と連携して、重症化する前に将来のリスクを本人に伝えるサービスなどが有望視されている。とりわけ健康無関心層にも訴求できるサービス開発が望まれる。
また、「人生100年時代」と言われるなか、現役を引退した高齢者の健康医療はより重要度が増す。そこで、図で示したような国や自治体が高齢者の定期健康診断などで得た情報を本人の同意とコントロールのもとで、PHR事業者やデバイスメーカー、健康増進サービスといった民間事業者と共有し、より密度の高い情報ネットワークの構築も検討されている。(つづく)