「わが社の働き方改革のKPIは“時短”しかありません。結局は、家に持ち帰っています」

 従業員に負担を強いて、カタチだけの成果をあげているようでは、優秀な人材が去って行くのは仕方がない。そんな企業がアジャイル開発やDevOps、クラウドネイティブやサーバーレスといったモダンITを受け入れることは難しい。

 モダンITに共通するのは「自律したチーム」と、それを生かした「圧倒的なスピード」だ。現場に大幅に権限を委ね、現場をよく知る彼らが自らの責任で判断し、直ちに実行する。これを高速で繰り返すことで、現場のニーズに直ちに応えることが、モダンITの本質だ。

 その前提にあるのは、現場への深い信頼と成果に対するコミットメントを大切にするという考え方で、時間ではなく従業員への信頼とやる気を管理することだ。

 「モノが主役」の時代は、労働力が最も大切な経営資源であり、従業員は働く時間を管理され、長時間働くことが美徳とされてきた。そんな時代は終わりを迎え、「サービスが主役」の時代に入ったにもかかわらず、時間を管理する思想に引きずられているから冒頭のようなことになるのだろう。

 5Gが間もなく本格的に普及し、「モノがつながることが当たり前」の社会になる。家電製品、住宅、設備機器、自動車などのモノが、サービスを使うためのデバイスとして私たちの日常に深く入り込もうとしている。

 サービスの品質は、顧客と対話し顧客のニーズやその変化に即座に対応できるかに左右される。だから、そのサービスを実現しているソフトウェアの改善を続けなければならない。そんな顧客との対話手段が「データ活用」であり、改善手段が「モダンIT」だ。その価値を最大化するには、従業員の質とパフォーマンスを最大限に引き出すしかない。必要なことは、信頼して現場を任せること。彼らの自発的なコミットメントを信じて、その障害となるものを取り払い、自律的成果を遂げることができる環境を整えることだ。

 コロナショックは未曽有の不況をもたらし、モノが主役の時代からサービスが主役の時代へと急速に進む。モダンITはそんな時代の変化に対応するためのデフォルトとなる。
 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。