視点

ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

2020/10/02 09:00

週刊BCN 2020年09月28日vol.1843掲載

 テクノロジーが発展し、社会環境も変われば、競争原理は変わる。これまでうまくいっていたやり方があっという間に通用しなくなる。

 加速するビジネス環境の変化、予期せぬ異業種からの参入によって、これまで苦労して築き上げた優位性を維持できる期間は短くなった。だから、市場の変化に合わせて、戦略を動かし続けるしかない。このような状況を「ハイパー・コンペティション」と呼ぶ。まさにいま企業はハイパー・コンペティションに向きあっている。

 この状況に対処し、企業の存続と成長を維持するには、圧倒的なビジネス・スピードを手に入れ、変化に俊敏に対応できなくてはならない。そのためには、デジタルを当たり前に使いこなし、その価値を最大限に生かすことができなくてはならない。そんな企業の文化や風土を変革することをデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ぶ。

 当然、その取り組みは、お客様にとっての価値、つまり、CX(Customer Experience)を高めることができなくてはならない。CXを高めるためには、自社の従業員にやり甲斐を与え、自己の成長に喜びを感じられる状況を作らなくてはならない。

 つまり、EX(Employee Experience)を高めなければ、CXのための自発的な創意工夫は生み出せない。「働き方改革」とは、そのための取り組みのことだ。時短やリモートワークをすることが、本質ではない。

 デジタルを前提にCXとEX向上のために、現状を変革することがDXだ。新しい技術を使うことでも、営業活動のための看板でもない。そんなDXに自らが取り組み、その経験とノウハウを、模範を通して提供するのが「共創」である。

 「御社と是非一緒に仕事がしたい」。そうやって、お客様を惚れさせることができないようでは、「共創」はうまくいかない。自分たちで実践もせず、DXや共創をお題目のように唱えるのは、やめようではないか。自らの実践もないままに「お客様のDXの実現に貢献します」など言うべきではない。

 まずは、CXとEXのために自らがDXを実践することだ。そうすれば、お客様はきっと、そんな会社に惚れてくれる。そうすれば結果として共創が生まれ、DXの実践者として世間に評価してもらえるようになるはずだ。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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