米フェイスブックが社名を「Meta(メタ)」に変えた。そしてメタバースに今年だけで100億ドル(約1.1兆円)を投入すると発表。世間はバズワードとなったメタバースで盛り上がっているが、本来のメタバースとMetaがいうメタバースには目指す世界観に違いがある。仮想世界にVRグラスをかけて没入することと、そこにすべてのサービスが集約されるだけと思ったら判断を間違ってしまうので注意が必要だ。

 そもそもメタバースとは、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語である。1992年に作家ニール・スティーヴンスンが発表した作品「スノウ・クラッシュ」に登場する仮想空間サービスに付けられた名前だ。その後、仮想空間サービスの総称として使われるようになった。一般的にメタバースは、CGのアバター(分身)を介して入り込める仮想の世界という意味で、コロナ禍で一般化したバーチャル○○といった仮想空間でのイベントやバーチャル展示会などがメタバースから想像できるサービスだろう。SNSなどでは、「メタバースはVRグラスが面倒くさいからはやらない」などの意見や、仮想空間での行動を疑問視する意見も多いが、Metaが言うメタバースは少し異なり、仮想空間に没入して体験することだけではなく、AR、MRのように現実空間に仮想の物や情報を重ねあわせた空間であったり、現実空間と仮想空間の間をシームレスに行ったり来たりしながら楽しむライフスタイルがやってくることを示唆している。

 移動の時間とエネルギーを無くすだけでなく、ビジネスや日々の生活に影響を与える使い方がどんどん発表されてくることは確実である。メタバースという言葉からコンピューターのつくるCGワールドにヘッドマウントディスプレイをつけて入ることを発想の軸にしてしまうが、あくまで私たちは現実に存在しており、現実社会にどう影響し、そこで生まれる価値が私たちの生活をどう変えるのかを考えるべきである。空間や空をディスプレイとして重ね合わせて利用することが全く新しいビジネスを生み出すだろうし、スマホで見ていた情報は、よりタイムリーにより安全に表示することが可能となる。

 未来はもう動き出してしまった。Metaが言うメタバースが変える生活をきちんと理解した上で、自分の生活や仕事にどう影響があるのかの想像はしておくべきである。

 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。