視点

知識の習得が求められる「新著作権時代」の到来

2022/03/23 09:00

週刊BCN 2022年03月21日vol.1915掲載

 今年の大学入学共通テストは、スマホを使ったカンニングがニュースになったが、知財関係者の間では現代社会の設問が話題になっていた。2012年以来、久々に著作権の正しい知識を問う問題が出題されたのである。「情報社会の発展は、グローバル化の進展に大きな役割を果たしている一方で、デジタル情報の複製による知的財産権の侵害という問題を引き起こしている」として、違法にアップロードされた楽曲を違法と知りつつダウンロードする行為に関する文章と、音楽CDを私的使用目的でスマホにコピーする文章の二つについて、正誤の正しい組み合わせを答えさせるというものだ。あなたは自信を持って答えられますか。

 著作権は既に大学入試で問われうる知識となっているが、25年の共通テストからは「情報」が出題教科に加わる。情報の教科書には著作権について書かれており、情報を履修した高校生は、全員が著作権の知識を持って共通テストを受験することになる。すでに私は5年ほど前、ある大手予備校で、情報を入学試験に採用している明治大学や慶應義塾大学の受験生向けに著作権を教えたことがある。入試のためとはいえ著作権の知識が一般に広がる流れは感慨深い。

 昨今は、新聞記者が他社の記事を盗用して問題になる事例がある。50歳代後半の知人によると、新聞記者として入社以来、著作権について教えられたことはなかったらしい。記者の中にも著作権に疎い人がいるのだから、一般企業の社員なら、ほとんどの人が教育を受けていないだろう。しかし、それは仕方がない、とは言えないのが現実だ。

 パッケージソフトに限らず受託ソフトであれミドルウェアであれ、プログラムは著作権で保護される著作物である。つまり、このコラムの読者は、何らかの形で著作権に関わっているはずだ。これから、著作権について学習した若者たちがぞくぞくと会社に入ってくる。そのとき、先輩社員は、時代に合わせて知識をアップデートしておかなくていいのだろうか。

 先輩社員から幹部まで、ぜひ著作権に関する知識を身につけてほしい。私が検定委員長を務めるビジネス著作権検定なら、コロナ禍においてオンライン受検もできるようになった。若者に、知識さらには見識でも負けるということがないように奮起を期待したい。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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