視点

「DXごっこ」から抜け出すためのたった三つのこと

2022/04/06 09:00

週刊BCN 2022年04月04日vol.1917掲載

 経営者はDXの大号令を下し、「何をすべきか」は各部門で考えろという。会社の方針だから、本業に差し障りのないところで、この「DXごっこ」につき合うことで体面を保つしかないが、このようなことになっているなら、次の三つのことに取り組んではどうだろう。

 1. 自社の非常識を世の中の常識に近づける

 自分たちは、世間常識から、かけ離れてはいないだろうか。例えば、世間で当たり前に使われているファイル交換サービスが使えず、セキュリティリスクが高く使用中止が推奨されているPPAP(zip暗号化添付)をいまだに使っている。あるいは、VPNの帯域が狭く、Web会議で画像を表示できないなどだ。こんな非常識を止めれば生産性は向上し、肩身の狭い思いをしなくてもよくなるはずだ。

 2. 身近な「困った」を見て見ぬふりをせず解決・改善する

 意見をすることが、はばかられる雰囲気はないだろうか。例えば、何のためか分からないが、慣習なので続けている業務がある。あるいは、正しいやり方は分かっているが、組織の体面や調和を乱すので言わないなどだ。こんな心理的安全性が欠如している状況を改めない限り、改善や変革は進まない。

 3. パーパス(存在理由)を再確認し、それに対する脅威を認識する

 自分たちのパーパスが、時代からずれてはいないだろうか。例えば、アジャイル開発の需要は限定的で、従来のやり方で当面は凌げると思っている。あるいは、内製化が拡大し、意志決定者が事業部門に移っているのに、営業のやり方を変えていないなどだ。

 こうした現状を真摯に受け止め、時代に即したパーパスを再定義すべきだろう。

 そんなことは十分に分かっているし、そのための情報収集や学びも怠らずにやっている人たちも多いに違いないが、そんな「個人の学び」が、「組織の学び」にならないのが心理的安全性の欠如である。結果として、学びを怠らない個人は、学ばない組織に見切りをつけて転職してしまい、学ばない個人と学ばない組織が残り、ますます改善や変革が進まないという悪循環を生み出す。この悪循環を絶つためには、ここに指摘したことを実践してみることだ。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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