「Windows Server 2012/2012 R2」の延長サポート終了が10月10日に迫り、サーバーメーカー各社は最後のリプレース需要を取り込むべく販売活動に力を入れている。昨年度、国内x86サーバー市場で出荷台数・金額がともにシェアナンバーワンとなったデル・テクノロジーズは、近年続いていた半導体不足の状況下でも供給力の強みを生かし、ユーザーを堅調に獲得。サポート終了に対しては、Azure Stack HCIを活用して従来の環境をそのまま延命できるプランも提案している。
(取材/日高 彰、文/堀 茜)
最新テクノロジーをいち早く使える
上原 宏 執行役員
国内のx86サーバー市場で、近年存在感を高めているのがデル・テクノロジーズだ。調査会社IDCのレポートによると、同社は出荷台数・金額がともに2021年度、22年度の2年連続で国内シェアナンバーワンを獲得した。その要因について、執行役員の上原宏・データセンターソリューションズ事業統括製品本部本部長は、「価格対性能比の高い製品が支持されたことに加え、供給面でもサプライチェーンの強さを発揮できた」と振り返る。
今年は10月にWindows Server 2012/2012 R2のサポート終了という特需要因を控えるが、企業ではクラウドの利用も進んでいる。オンプレミスのサーバー需要はどこにあるのか。「社内ポリシー上、自社のデータセンター(DC)内でサーバーを運用したいというニーズは根強くある」(上原執行役員)。
加えて、AIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の分野では高性能なGPUが必須になる中、オンプレミスのサーバーであればパブリッククラウドとは異なり、出荷直後から最新のGPUをフルに活用できる。同社も、NVIDIAの最新GPU「H100」を搭載したサーバーを3月に発売した。また、コストの面においても、ドル建て払いで為替変動の影響を受ける海外のクラウドサービスに対し、オンプレミスなら支出計画を立てやすいという特徴がある。
NVIDIAの最新GPUを搭載した
「PowerEdge R760xa」
電力最適化などの独自機能を搭載
x86サーバーは主要なコンポーネントやアーキテクチャーが各社共通だが、デル・テクノロジーズは、独自の設計や付加機能で優位性を示そうとしている。例えば、同社の最新サーバーが搭載している「Dell PowerEdge RAID Controller 12(PERC 12)」は、データ転送速度が従来の2倍となっており、RAIDストレージの再構築時間を半分にできる。
最も注力しているのが、冷却技術だ。コンポーネントごとに温度を管理し、電源ユニットやGPUなど、発熱量が多い部分のみを重点的に冷やす特許技術を用いることで、冷却性能と消費電力を最適化する。上原執行役員は「電気代が高騰する中で、消費電力の抑制、CO2排出相当量の抑制という環境負荷の軽減が、お客様が製品を採用する上での大きなポイントになっている」と分析する。
ハイブリッドクラウドへの対話機会に
津村賢哉氏
サポート終了が迫る中、ユーザー企業はどのような課題を抱えているのだろうか。同製品本部マイクロソフトソリューション部の津村賢哉氏は、「人手不足、予算確保の苦労、時間や情報の不足」と指摘する。最新OSへ移行しても、業務アプリケーションの機能が良くなるわけではない。クラウドの検討も求められる中、IT部門の担当者は自社の経営層に対し、サーバーの更改で何かメリットはあるのか付加価値を説明しないといけない。「検討項目が複雑化しており、サポート終了が迫る中でも、リプレースのスケジュールは全体的に押している」(津村氏)印象だという。
同社はそういった顧客向けに、米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービス「Azure」のメリットを、オンプレミス環境に持ち込むという提案をしている。マイクロソフトは、Windowsのサポート終了後も一定期間パッチの提供を受けられる「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」を、一定の条件を満たしたAzureユーザーに無償で提供している。マイクロソフトのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)基盤である「Azure Stack HCI」のユーザーもこの対象となっているため、企業はAzure Stack HCIを導入することで、Windows Server 2012/ 2012 R2上のオンプレミスのアプリケーションを継続して運用しながら、Azureと連携したシステム拡張が可能になる。
この施策の利点として、津村氏は「販売パートナーは、オンプレミスとクラウドのいいところ取りの提案ができる」とアピールする。新しいサーバーへの単純な入れ替えを提案しても、ユーザーはそこに価値を感じにくく、いかにコストを最小化するかだけの議論になってしまう。それよりも、ESUの活用およびAzureとの連携を視野に入れることで、ユーザーは現在のアプリケーションに手を加えることなく、将来的なクラウドの活用に向けて自社のペースで運用スキルを身につけていくことができる。パートナーにとっても、独自の付加価値を付けやすいというメリットがある。
デル・テクノロジーズは日本マイクロソフトと共同で、Azure Stack HCIのデモンストレーション施設「DEJIMA」を21年から運営しており、ハイブリッドクラウド環境に興味のあるエンドユーザーを持つパートナーは、ぜひ一緒に訪問してほしいとする。上原執行役員は、「サポート終了を足掛かりにして、ハイブリッドクラウドへの対話の機会にしてほしい」と呼びかけている。