旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->8.10周年記念旅行

2002/07/01 15:27

週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載

 我が社の40年の歩みのなかで、記念行事や感動・感激した思い出は数多くあるが、そのなかでもとくに印象深く、当時参加した人たちの間で今もまず第一に語られるのが、この10周年旅行のことである。

 昭和46年9月24日から2泊3日の旅行を社員310名が全員揃って行った。日航機2機に分乗したが、当時は飛行機に乗るのが初めてという社員も多く、まして北海道ということで観るもの全てが感動の楽しい旅であった。

 しかしその時は、国内景気が急速に下降しつつあるという最悪の状況にあった。

 我社の業績も8月以降急速に売上不振に陥った。そうした戦後初めて経験する経済危機だけに旅行を中止すべきだという意見もあったが、10周年を記念して1年前から計画してきたことであり、何より社員の期待が大きかっただけに、ここは何としても実行しようと考えた。

 初日は千歳から支笏湖、羊ケ丘を経て札幌市内を見学した後、定山渓温泉に1泊。2日目は中山峠、洞爺湖大観望を経て、有珠山に登り昭和新山など活火山の脅威を実感。湖上遊覧の後、洞爺湖温泉に宿泊した。

 その夜の宴会の盛上りと社員の満足した笑顔を見て、私は無常の喜びを味わっていた。雄大な北海道の大自然の中をバス8台を連ねて快調に走る気分は爽快で最高であった。

 3日目は雨だったが、その中をオロフレ峠、登別温泉、白老アイヌ部落を訪ねた後、千歳に向った。雨の空港はかなり混雑していた。台風のために全日空はすべて欠航した。幸い日航は定刻遅れだが出発するというので3機に分乗して飛んだ。

 しかし『行きはよいよい、帰りは怖い』というわらべ歌の通りに、肝を冷やすような大揺れの連続で、全員どうなることかと生きた心地がしなかった。

 その後我社は厳しい苦戦が続き、初めて減益、それも前年比半減という苦汁を味わった。この年は思いもよらぬ極端な明暗を経験した年であり、この10周年旅行は生涯忘れられない強烈な想い出として残っている。
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