世界最大の総合小売企業であるウォルマートは、大企業間電子商取引の標準となっているEDI(Electric Data Interchange)の大口需要家として、1万4千社にのぼる取引先との間で年間2170億ドルもの電子決済を行っている。専用線を利用するEDIは維持費が高額となるため、そのトランザクションプラットフォームを専用線からインターネットへ移行することがEDI業界の急務となっていた。

 今回ウォルマートが次世代電子決済手順として採用を発表したAS2は、インターネット上で電子商取引を行うための技術規約で、ebXMLやUDDI関連などに比べると、これまであまりIT市場で話題になることがなかったものだ。現在のEDI市場で日々取り引きされている多量のデータは、今後そのプラットフォームが専用線からインターネットへ移行するにともない、更に増加の一途を辿ることが予想されている。AS2規約は、この破壊的な量のデータトラフィックをインターネット上で確実かつ安全に管理することを至上命題として開発された。

 ウォルマートと今後も取り引きを継続したい商品納入元は、否が応でもこの新システムに参加しなければならないため、ウォルマートにAS2準拠の電子決済システムを納入したiSoft(アイソフト)は、年間300ドルの会費によりこの新システムへの移行を支援するプログラムを用意した。ウェブサービスの到来を期待するさまざまな報道がここ数年来盛んにIT市場を飛び交っているが、この喧伝をよそにEDIのインターネット対応を着々と進めてきた業界勢力が、ウォルマートを核とする巨大電子購買システムを構築したことの意味は大きい。マイクロソフトとサンという、パソコンおよびUNIXそれぞれの市場の覇者によるウェブサービスでの攻防は、既存EDI勢力がシステムのインターネット対応を進める間隙を狙って、電子商取引市場に参入しようとする強い動機がその背後にあったことが伺える。(米サンノゼ発)