旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->31.ヨーロッパの旅 IV-(4)リヨンからジュネーブを経てウィーンへ

2003/06/23 15:27

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

 10月8日、リヨンを発ち高速道路でジュネーブに向かった。バスで国境を越えるのは初めてだったが、検問所で簡単なチェックだけだったのに驚いた。当時既にヨーロッパは国境の垣根が低いのを実感した。4年に1度のテレコム視察では、前回と比べて技術進歩の速さに驚いた。そのなかで今回も規模と内容でNECが一際目立っていた。

 夕刻空路チューリッヒ発でウィーンに向かい、由緒あるインペリアルホテルに3泊した。風格のある素晴らしいホテルだった。

 ウィーンはオーストリアの首都だが、かつては名門ハプスブルク家の栄光と共にヨーロッパ政治経済の中心地であり、パリと並ぶ「世界の都」であった。

 第二次大戦まではオーストリア・ハンガリー二重帝国の首都だったが、敗戦後永世中立国となり、ウィーン郊外に数棟の近代高層ビルからなる「国連都市」が建設され、ジュネーブと共に国連活動の中心地になっている。そのためにマーシャルプランによる戦後復興が早く、共産圏に入ったかつての同邦隣国ハンガリーの首都ブタペストの復興の遅れと大差がついた。

 ウィーンは早くから音楽や絵画、演劇、建築などで常に世界の最高峰を誇っており、多くの世界的な音楽家を輩出してきた。今もその伝統が受け継がれて、世界の音楽家の登竜門として、日夜その英才を競っている。

 ここはかつてのような世界の政治経済の中心地としてではなく、ほかに例のない心温まる“癒し”の都として、今も市内の至る所に時代を超えて高い文化の香りを馥郁と漂わせている。

 翌朝、ドナウ河を渡って国連を訪ねた。実際の会議をのぞき、職員と歓談昼食を共にし、別世界を知った。往復のバスのなかからプラターの大観覧車を望見し、ジョセフ・コットン主演の映画「第三の男」を懐かしく思い出した。
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