旅の蜃気楼

街ができる

2003/07/14 15:38

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

▼六本木ヒルズの49階の窓から東京タワーを見ると、大きいと思っていたはずのタワーも、名古屋にあるテレビ塔のように小さく感じるではないか。新しいビルが建つごとに、刻々と都市の顔は変化する。4月25日、テレビ朝日の跡地一帯にかっこいい都市が誕生した。森ビルが20年をかけて再開発した街だ。森ビルの社長・森稔さんの話を聞いた。たった1時間のパネルセッションだったが、話が終わって会場から、「大きな希望をもらいました」と声がかかった。ほんとにそう感じた。だって、街が誕生してから、日経平均株価も右肩上がりだ。

▼上海の街は3か月ごとに変化している。1995年から00年の間の街の変化を森さんから説明を受けた。その早さには驚きである。やはりそうであったか、と納得した。秩序だった街の変化。それにはグランドデザインが必要だ。個々人が自分勝手に家造りをしていると、雑然とした顔の街しかできない。「住む、働く、楽しむ街」。そんな街づくりが六本木ヒルズのコンセプトである。つくるからには「100年先を見据えた街づくり」。東京は今、変わりつつある。明日の顔が少しずつ見え始めている。あなたは六本木派、汐留派、飯田橋派?

▼街づくりは、路づくりから始まる。エネルギー対策も基本的な検討事項だ。緑も欠かせない。樹木の並木があって、木漏れ日の間を歩くって、とても素敵だ。表参道のケヤキ並木を思わせるケヤキ坂も、六本木ヒルズにできた。まだ樹木は根付いていないが、年々、街が大人になっていく。街にいて、武蔵野を散策している気分になるといいな。森稔さんの熱い想いが、東京の街を大人に進化させている。社会は人が作っているんだと、実感した。平均株価が1万円に驀進している。

(本郷発・笠間 直)
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