Letters from the World

ルール

2003/12/15 15:37

週刊BCN 2003年12月15日vol.1019掲載

 シアトルに、サンフランシスコエリアの家電量販店である「Fry'sエレクトロニクス」がオープンした。店舗の大きさは今までシアトルにあった他の家電ショップの何倍もある。毎週日曜日のシアトルタイムスには、カラー広告がスポーツ欄一面に掲載されている。開店当初は破格値の商品も多く、私もシャープ製の27インチテレビ(ブラウン管)を99ドルで購入した。今年は景気が良くなったのか、多くの店舗が記録的な売り上げを発表した。その中でもウォルマートは1日の売り上げとしては過去最高の1.5ビリオン(ゼロが9個)ドルを売り上げた。

当然こんな時だからFry'sにも人が集まっているだろうと思い、土曜に行ってみると、がらがらだ。しかし、多くの顧客を期待してか、レジはなんと50個近くも開いている。言うまでもなく、レジで並んでいる人はいない。結局目新しい物はなく、単4の電池を買ってレジに向かう。レジには2つの列ができるようにラインが作られている。右側のラインは裏側のレジ、左のラインは表側のレジに行く人たちように準備されている。何度も書くが、レジに向かって並んでいる人はだれもいない。

私は、レジに近い右のラインからレジの入り口に向かった。右側のラインの入り口は表のレジ群の右端に出てくる。そしてそのレジにはお客がいなかったのである。そこで、私は電池を持ってそのレジの前に立った。「お客さん、裏のレジに行ってください。ここは、左の列に並んだ人のレジです。」と言われた。何度も言うが、誰もレジには並んでいない。「これはルールです。」サンクスギビングホリデーに客足が途絶えたFry'sの理由が見えたような気がした。どのような会社にも、ルールというものはある。それに従って作業をすることは決して間違ったことではない。しかし、ルールという約束に縛られていたのではいけない時もあるのだ。(米シアトル発:パシフィックソフトウェア パブリッシング 内倉憲一)
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