旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->47.九州の旅-(1)人吉・五木村

2004/02/16 15:27

週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載

 川辺川ダムの建設で、あの「五木村」が近く水没するという話を聞き、水没する前にこの眼で見ておきたいという熱い想いに駆られて、2002年5月、熊本県の山間部を縦走した。

 鹿児島空港から九州自動車道で人吉市に向う。真新しく素晴らしい幅広の片側2車線道路だが、ここも他の地方高速道路と同じく、ほとんど車が走っていなかった。聞けば地元の車は混雑のない無料の一般道路を使っているという。わずかに客を乗せたタクシーだけが走っていた。東京の超過密道路に較べて余りの落差に驚きを通り越して、憤りを感じてしまう。

 人吉。鎌倉時代から維新まで700年、相良氏が支配していたところで、人吉城の城壁が残っている。ここは独特の仏教文化を育み、神社仏閣も多い。西南の役で西郷軍の本陣となった永国寺には記念碑が建っていた。 有名な日本三大急流の球磨川下りは、スリル満点、その価値がある。川に面した翠嵐楼は由緒ある温泉宿で、自慢の川魚料理はさすが。

 五木村。球磨川の支流川辺川に沿った、曲がりくねった道を車で1時間。深い山合いの貧しい集落で、昔は食料不足に悩み、人減らしのために、幼い娘が遠く人吉へ子守役として奉公させられたという。集落には子守娘のモニュメントがあり、ボタンを押すと“おどま盆切り盆切り、盆から先きゃおらんと、盆が早よくりゃ、早よもどる”幼い少女が哀感のある子守唄を切々と唄っている。涙なしには聞いていられない。

 この時はまだダムの工事中であったが、その後全国的なダム工事見直し論が強くなり、ここも当分中断されることになった。私も自然破壊を強く反対する1人として、大変嬉しく思っている。
  • 1