欧米人がワインを褒めるとき、「フード・フレンドリーなワイン」という言葉をよく使う。食事に合うワインという意味で、それだけで飲むには惜しい、何か食べ物がほしくなる旨さということだ。フード・ワインともいう。

 たしかにワインは、食事と合せてこそ楽しみが増す。私も昼はともかく夜の食事でワインにありつけないと、とたんにがっかり。子供のころワインなしで食事をしていたなんて、今では信じられないほど。

 料理とワインの相性のことを、マリアージュとよぶ。結婚という意味だが、肉には赤ワイン、魚には白ワインと頑なに思い込まずもっとフレキシブルでもよいと、私は思う。

 フランスやイタリアなどワインが日常の食卓にふつうにあるところでは、特別な機会でもないかぎり、食事に合わせてワインを選ぶというよりは、そのときあるものを飲んでいるようだ。

 また、肉といっても、チキンやターキーなどのホワイトミートには白ワインのほうが合うこともあるし、脂ののったサーモンのグリルにはピノ・ノワールなどの赤ワインも悪くない。素材もソースで変わるから、マリアージュは無限の可能性がある。

 ワインを楽しむ人それぞれに好みの食事に合せたフード・ワインがあると思うが、私のそれはオーストリアのグリューナー・フェルトリーナー。あのコアラのいる南半球の国ではなくウィーンのあるヨーロッパの国ですよ、念のため。

 レモンなどの柑橘系のきれいな果実味に白胡椒のようなスパイシーなトーンが特徴で、オーストリアの栽培面積の3分の1を占める主要品種。畑の個性によって、白い花の香りのエレガントなもの、ミネラル香のしっかりしたものと多様なタイプに仕上げられる。オーストリアは白ワインの生産量が赤ワインの約3倍で、それこそ肉を食べるときにも白ワインを飲むことが多い。例えばウィーン名物シュニッツェルもグリューナー・フェルトリーナーを合せるのが定番だ。

 6年前、ワインの仕事で初めてウィーンを訪れたときに私もこのマリアージュを体験した。最初は肉にワインが負けちゃうんじゃないかな、とおそるおそる口にしたのだが、これがものすごい好相性。あの日以来、ウィーンに着くたびに何をおいてもシュニッツェルとグリューナー・フェルトリーナーへと心がはやる。土地のもの同士を合せるのはマリアージュの基本だから、相性がよいのは当然ではあるが、それ以上に、グリューナー・フェルトリーナーの控えめながらきりっとした酸味とペパリーなトーンに、料理を支える力があるとみた。