久々に実家に戻ると、「ワインを買っておいたぞ」と父が言った。ビール党の父が選ぶワインに期待は持っていなかったが。

 「いまだに?」と感慨深かったのはワインオープナー。酒屋でタダで配っているもので、むき出しのスクリューの上部に横長の持ち手がついており、スクリューをコルクにねじこみ、ムリヤリひっこ抜く。

 家族の笑いを取りながら抜栓して思った。ワインに伴う「高級感」や、「スマート」という形容詞は、ソムリエナイフによる抜栓という儀式が大きな割合を占めるのではないだろうか。

 そういう意味で、ワインにとっての過渡期が今、訪れようとしている。コルクorスクリューキャップの論議が近ごろ盛んに行われているのだ。

 オーストラリアやニュージーランドのワインの40%はすでにコルクでなくスクリューキャップが使われている。手ごろな価格のテーブルワインのみならず、トップクラスのワインもだ。カリフォルニア、チリ、アルゼンチンなど他のニューワールド、さらにはフランス、スペインなどの伝統的な造り手もスクリューキャップを取り入れるところが増えている。

 なぜワインの付加価値の1つともいえるコルクをやめて、スクリューキャップに移行するかといえば、一定の割合でコルク臭のするワインが発生し、瓶詰の段階で、それを予測するのはムリだから。その割合はワインの5%とも10%とも、欧米のレストランでは20本に1本ともいわれる。

 この臭いはカビに起因するもの(人体に影響はない)で、レストランでホストテイスティングするのはこの有無を確かめるためだが、程度に差があるため、客側と店側の見解が一致しないこともあり、両者間に不穏な空気が流れることも。ワインを交換するとなれば店側の出費となり、コルク臭のないワインにこしたことはない。しかしスクリューキャップには、チープなイメージがつきまとう。

 「スクリューキャップは熟成するワインには向かない」という昔ながらの生産者がいるかと思えば、「世界で生産されるワインの90%以上が購入後(生産ではない)半年以内に飲まれる。熟成よりコルク臭の心配を」というスクリュー支持派もいる。

 私は、スクリューキャップはまだ導入されたばかりでどのように熟成するか判断するのはまだ早いと思う。しかし確実にスクリューキャップのワインに触れる機会が増え、ソムリエナイフの登場頻度は減っている。