▼奈良県の山の中。山道を登りつめると、森に囲まれた一画に、「峠の茶屋」がある。ここでは、名物の「茶粥(ちゃがゆ)」と懐石調理を楽しむことができる。茶粥は、茶漉しに地元産の煎茶「大和茶」を入れ、白米と一緒にお粥として炊く。二日酔いの朝には、これが効く。

▼大和茶は、近年まで、「地元に残らないほど」隣の京都府へ多くを出荷していた。そのため、「大和茶」のブランド名は、全国に伝わっていない。だが、ここ数年、奈良県農協などでは、地域興しで「大和茶」の名を全国に広めようと、宣伝活動を強化しているという。茶粥の店にも、お持ち帰り用の大和茶に加え、茶粥を真空パックにした商品を並べている。最近ではオンラインショッピングにも出して、積極的に全国へ販売しているそうだ。

▼IT化も厭わないような、この茶粥の店だが、食事の精算の時には、手になじんだ昔ながらの木製そろばんが活躍している。おかみさんに聞くと、出勤管理も昔ながらの紙帳簿のままだという。

▼この茶粥の店も今夏、4月の改正消費税に合わせ会計ソフトの導入を検討した。店の経営にも携わる息子さんが提案した。だが、今夏は記録的な猛暑。茶粥の店は、森を吹きわたる自然の風を部屋に通し、風情を醸し出すのを〝売り〟にしてきた。しかしおかみさんは、「さすがに今年は耐え切れずに」、畳部屋全6室にエアコンを入れた。この出費により、会計ソフトは来年に持ち越しとなってしまった。