Letters from the World

地方からの情報発信

2004/10/25 15:37

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

 今年の10月初旬は珍しく日本と米国の連休が同じになった。日本では体育の日となる10月11日は、米国でもコロンバス・デーと呼ばれる休日で、いつもは週明けに集中する仕事の連絡も少な目ということで、のんびりした休日を過ごす人が多い。筆者は、ロングアイランド東端に出かけた。このエリアには30軒ほどのワイナリーが隣接しており、車で少し走れば数軒のワイナリーを見て回ることができる。見渡す限りにブドウ畑が広がるのんびりした風景は、ニューヨークとは思えない素晴らしいものであった。

 出発前にネットで下調べしていると、目的地近くの小さな村で、秋の収穫祭が行われているのがわかった。そこで、その村に立ち寄ることにした。地ビールや地元農家が作る新鮮なとうもろこしなどを味わえたのに加え、主目的のワイナリーもそのほとんどがネットで自社の情報を積極的に公開している。自分の好みのワインを作っていそうなところを事前に選び、効率よく巡ることができた。

 一方日本の田舎で、地元の催し物や地酒の醸造元の情報をネットに載せているところがどれだけあるだろうか。手弁当をもち寄って開かれる「おらが村の秋祭り」の情報などは地元の人たち以外はなかなか知ることができないのが実状だ。日本中に無数に存在するはずの小さな造り酒屋の情報もぜひ発信して欲しいと願う人は多いだろう。

 「地元活性化のためにITを」という掛け声はよく聞かれるが、取りあえずできることからやるという姿勢はなかなか見えてこない。何事も大仰に構えがちな日本社会の体質なのかもしれないが、秋祭りの準備をする傍ら、気軽に情報発信をすることはできないものだろうか。村の若者がワープロで一晩かけて一生懸命つくったチラシをそのままHTML化して載せればいいだけだ。大した手間でもなかろう。ちょっとくらい見た目が悪くても、情報発信するだけで十分価値があると思うのだがいかがなものだろうか。(ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)
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