私は以前から棚田の美しさに魅せられて、目にするたびに各地で写真を撮ってきた。インドネシアのバリ島で買った大きな棚田の絵は額装して応接室に飾ってある。最近「日本の棚田百選」という本を読んで、東京に近い千葉県鴨川市に「大山千枚田」というのがあることを知り、早速昨年11月18日に訪れた。

 東京湾アクアラインを通って2時間、そこに予想していたよりも遙かに美しい棚田が残っているのを観て感動した。全国的に耕作者が減り休耕田が多くなっているというのに、ここは関係者の努力と工夫によって立派に守られている。それを目の当たりにして、その美しさに息をのんだ。

 千枚田は標高200メートルほどの丘陵の南斜面に375枚の棚田がある。畔はコンクリートではなくすべて土堤で、ゆるやかな等高線が美しい曲線を描いている。段差1.5-2.0メートルの階段になっていて、その数は30近く。まるで野外劇場の観客席を見るようである。

 ここは水源を持たない全くの天水田で、それでいて早魅が少ない。これは海に近いことと水持ちのよい土質によるらしい。地元の有志が集って大山千枚田保存会(石田三示理事長)を結成し、拠点施設として棚田倶楽部が建てられていた。耕作放棄地の復田や保全のために、棚田オーナー制度を設け都市住民の超短期の利用を講ずるなど活発に活動している。現在オーナーは136人いて、春の田植えや夏の蛍狩り、秋の刈り入れなどに家族連れで参加している。

 各地で自然が破壊され、景観が失われつつあるなかで、何世代もの先人達が築きあげ、耕し続けてきた美しい棚田を、こうして守り続ける人々がいることに深く感動し、心を弾ませながら帰ってきた。その後、棚田用に小型ショベルカーと車庫を寄贈し、会員にもなることができ、私は今幸せいっぱいです。