北斗七星

北斗七星 2005年2月7日付 Vol.1075

2005/02/07 15:38

週刊BCN 2005年02月07日vol.1075掲載

▼「企業にとって一番の危機は、オリジナルの技術がなくなったときです。その時、会社はつぶれる」。BCNの1994年3月7日号「Key Person」で、ジャストシステムの浮川和宣社長はそう語った。それから11年後。自社製品の製造・販売禁止の判決が下るとは、浮川社長は予想だにしなかったに違いない。

▼2月1日、松下電器産業がジャストシステムに対して「一太郎」などの製造差し止めを求めた訴訟で、東京地裁の判決が下った。それは製品の製造・販売の禁止と在庫の廃棄。ジャストシステム側にとっては厳しい内容で、当然控訴。仮執行宣言は行われなかったので、すぐに店頭から「一太郎」や「花子」が姿を消すことはない。しかしこの判決、IT業界に衝撃を与えたことだけは確かだ。

▼今回の訴訟の論点は特許権侵害。昔ほど「物」が売れなくなっているなか、企業は知的財産の強化を打ち出している。独自技術で市場を制覇すれば、莫大な利益を得ることができる。まさに〝知財〟が企業戦略の中心。液晶技術や先頃の青色発光ダイオード開発を巡る争いなどは、その端的な例だ。

▼今回の判決について、業界関係者の間でも意見が分かれている。「知的財産保護の主張は企業として当然」。「今回の特許権侵害による松下の損失は微々たるものだろう。松下の主張は大人げない」。賛否両論だ。かつては〝NECのパソコン「98シリーズ」が売れたのはジャストシステムのソフトのお陰〟とまで言われた。〝日の丸ソフト〟は地平線の向こうに沈んでしまうのか。
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