アップルコンピュータの「iPod shuffle(アイポッドシャッフル)」の人気は相変わらずのようだ。ニューヨーク市内の販売店で現物を見ることはまれで、入手には早朝にアップルの専門店に出向く必要があるなど、本当か嘘か分からないような噂まで耳にする。

 ところで台湾のLuxPro社の「Super shuffle(スーパーシャッフル)」が話題だ。iPod shuffleに瓜ふたつの製品で、先日開催されたCeBITで発表された。FMチュ-ナーやボイスレコーダー機能を搭載し、WMAにも対応。さらにはマッキントッシュとの互換性も保たれている。本家より高性能かつ低価格なのがセールスポイントだ。ところがこのSuper shuffle、CeBITに展示されていたものはモックアップに過ぎず、LuxPro社にはこの製品を市場に出す意図すらなかったという。そもそも同社はOEM(相手先ブランドによる生産)企業であり、取引先を捜すための話題作りというのがことの真相らしい。

 スーパーシャッフルが企業宣伝目的であることが判明したのは、ある米企業が販売権を取得しようとしてコンタクトしたのがきっかけという。これは的確なマーケティング戦略であったといえるだろう。CeBITの会場ではアップルによる訴訟が懸念されていたらしいが、生産する意志もなく一種のジョークと捉えられたのか、アップルにそれらしい動きはない。結果的に同社の名前は世界中に知られることとなり、宣伝効果は予想以上だったのではないだろうか。

 LuxPro社はあまりの好評ぶりに気を良くしたのか、製品名を「Super Tangent(スーパータンジェント)」として今度は本気で市販化に向けて開発に着手したらしい。まさに嘘から出た誠であり、すでにOEM化も含めいくつもの企業から打診があるという。

 LuxPro社の手法はやゲリラ的であり、西側諸国では受け入れられることのないだろう。しかしそのウィットを評価する業界人が意外に多いのも確かだ。たまにはこういう笑い話も良いのではないだろうか。(米ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)