Letters from the World

使い捨てビデオカメラ

2005/06/20 15:37

週刊BCN 2005年06月20日vol.1093掲載

 6月6日、米大手ドラッグストアチェーンのCVSは、29ドル99セントいう低価格で使い捨てのビデオカメラを発売した。製品名は「CVS・ワンタイムユーズ・ビデオカムコーダー」。その名前からもわかるように、使い捨てであることを強く訴えている。ハードウェアの開発はシリコンバレーのピュア・デジタル・テクノロジーズ。西海岸の新進ベンチャーと東海岸の歴史ある大企業の提携によってこの新たな事業が実現したことになり、注目を集めている。

 この使い捨てビデオカメラ、顧客が撮影後に再度CVSにカメラを持ち込めば、今度は12ドル99セントで録画した映像のDVDを入手できる。このDVDには専用のメールソフトも付属し、友人や家族に動画を送ることができる。これまでビデオカメラやパソコンが苦手の人にも使って貰えるようにとの戦略だ。同社はこれまでCVSの店舗とはあまり接点がなかった層の掘り起こしに大きな期待をかけているといい、その期待の大きさが見て取れる。

 CVSでは店舗内にDPE用のカウンターを用意しているが、デジタルカメラの普及で収益は悪化しており、何らかの打開策を必要としていた。これはライバル各社も同様である。しかし使い捨てビデオカメラに関しては、仮に事業化が可能であっても収益には結びつかないという見方も強く、どこも二の足を踏んでいた。

 当初の販売拠点は、全米5400か所以上のCVSチェーン店のうち1400店にとどまるが、6月中には4500店舗以上がこの製品を取り扱うことになるという。

 米国ではビデオカメラは高額商品だ。購入をためらっている消費者は多いし、また使用頻度が低いなどで購入ためらうケースもある。CVSは今回の新事業で新たな需要確保と各店舗の活性化、そして同社の知名度アップなどいくつものメリットがあると考えているようだ。DVDを手にするまでに必要な金額は43ドル。日本円で5000円弱。この価格設定が米国市場でどう出るのか。業界の注目を集めている。(米ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)
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