北斗七星

北斗七星 2005年6月27日付 Vol.1094

2005/06/27 15:38

週刊BCN 2005年06月27日vol.1094掲載

▼取材手法の1つに「夜回り」がある。家庭での団らん時や帰宅時を襲うわけで、歓待されることもあるが、多くの場合は迷惑がられ、怒鳴られることもある。昼間の取材では温厚な紳士だったりするので、そのギャップが面白く、個人的には好きなのだが。

▼ある大企業の経営者、幾分聞し召されてご帰宅された。待ち受けていたのは、私と某大新聞の記者。聞きたいことは明確で、記者同士の現状認識も一致していたため、互いにそれに基づき質問する。しばらく黙って聞いておられたが、「外資のお先棒を担ぐ、売国奴のようなマネはするな!」と一喝された。

▼日本経済を支えてきたとの自負はお持ちであり、その歴史を背負った立場からの言葉と解釈した。もちろん、別の現状認識も持っておられたはず。その後、事態は記者たちの認識に沿う形で推移した。

▼歴史認識を巡って、東アジア諸国との関係がギクシャクしている。現状認識からの将来展望が、過去の歴史認識と連続性があるとは限らない。ともに「真」であることもある。国交回復後の歴史認識に立ち「中国に対するスタンスは変わらない」と言い切る企業経営者がいた一方で、「人民元切り上げ」を視野に新たな投資先を探す企業はIT業界内にもある。歴史認識から現状認識に至る間には、多岐にわたる因子がある。相互理解には、単なる通訳ではなく、こうした因子をも理解した「言葉の翻訳家」が必要だ。残念ながら一朝一夕に育成できないが、近い将来の登場を期待したい。
  • 1