▼上場企業の時価総額が500兆円を超えた。バブルの最盛期が600兆円だから、来年にはこのピークを超える可能性もありそうだ。バブル期の象徴といえば、最先端のIT機器を揃えた三洋証券(当時)の巨大なディーリングルームが思い浮かぶ。企業の売上高ランキングでは、野村證券が製造業を抑えて、金融業界で初の日本一になった。地価の高騰と余剰資金のはけ口が、実態経済以上に株価をつり上げていたバブル期からすれば、今回の景気拡大ははるかに健全だろう。

▼しかし、待てよと思う。IT産業にとってはどうだろう。当時、日米の経済摩擦の焦点は、半導体だった。日本の半導体が世界を席巻し、さらに富士通、日立製作所がIBMを追い上げ、アメリカは迫りくる日本企業の足音に本気で怯えた。今はどうか。サーバー、半導体、パソコンのいずれも、日本企業は世界のトップに水をあけられている。何より世界市場で覇権を争える骨太のビジョンが描けない。ソフト産業にいたっては、残念ながらひたすら国内需要に頼るばかりの閉塞感が漂う。

▼「天気晴朗なれど波高しだ」。ある大手システム企業のトップは、来年の展望をこう語る。企業のIT投資額は回復し、業績の拡大も確実に見込める。しかし、長期的な成長が描ける「向こう岸」が見えてこない。金融、製造業のバブルの清算はめどがついたが、IT産業の本格的な復活はいつになるのか。06年が、せめてその端緒となることを期待したい。