北斗七星

北斗七星 2006年6月5日付 Vol.1140

2006/06/05 15:38

週刊BCN 2006年06月05日vol.1140掲載

▼6月から駐停車違反の処罰が厳しくなった。駐停車禁止ゾーンに車を停め、運転手が離れた瞬間に違反。民間の監視員がデジタルカメラで撮影、反則切符を発行する。反則金を支払わない場合には車両の保有者に罰金を科すだけでなく、車検を受けられないようにする。

▼東京都心では、駐停車違反車両で繁華街やオフィス街の道路の片側1車線が占領され、渋滞の原因になっている。これまでパトロールの交通警官が違反車両を見つけると、道路とタイヤに白チョークで印をつけて時間を計っていたが、デジタルカメラの登場で誰にでも「証拠」が撮れるようになった。

▼交通渋滞の解消と事故の防止に効果的なようだが、外交官や政治家、弁護士、医師といった社会的強者の駐停車違反を見逃していた警察が、民間に取締りを指導するのはどこかおかしい。運送車両や社用車など止むを得ない事情の駐停車はどうするのか等々、問題は山ほどある。車両にICタグを取り付けておけば、保有者の氏名・住所、用途などがたちどころに分かるし、速度違反の車両も取り締まれるという論は、ITが諸刃の剣という見本だ。

▼背景にあるのは「小さな政府」「民間に任されることは民間に」という改革指針だが、交番はもぬけの空、警官のパトロールが廃止されたあげくに小学生が殺害され、民間人がお互いを監視する風潮が生まれている。社会の安全と信頼を維持する費用を削減するのは、IT化とは別次元の話だ。
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