北斗七星

北斗七星 2007年6月11日付 Vol.1190

2007/06/11 15:38

週刊BCN 2007年06月11日vol.1190掲載

▼善きにつけ悪しきにつけ、ツケは必ず回ってくる。決済日がくればカードの支払いは容赦なく引き落とされる。駐車違反の減点が何かの間違いで消えてなくなるなんて都合のいい話もあり得ない。天網恢々疎にして漏らさず。うそをつけばエンマ様に舌を抜かれる。日本社会の基盤を支えているのは、こうした実直な価値観である。

▼逆にいえば良識が機能しない場合のフェイルセーフの欠落が弱点でもある。社会保険庁の問題がその最たる例だろう。外部の監視体制さえ機能していれば、年金記録の不備が10年間も放置されることなど起こるはずがない。早期に取り組めば5000万件の個人の名寄せにも打つ手はあったはずだ。

▼運転免許、税金、年金番号。個別に作成された台帳を共通化するだけで、コスト削減だけでなく確実に個人を特定できる。当たり前のことだが世論を恐れて誰も手をつけようとしなかった。年金問題の本質は、結局のところ国民の一元的な共通台帳が存在しないことに発端がある。このままでは税金も二の舞になりかねない。電子マネーやポイントは、国境を越えて形のないデータやサービスとネット上で自由に交換できる。正確に課税するには全ての預金口座を一本化して入出金を国が把握する必要性も出てくる。世論の反発は必至だろうが、それを承知で議論の場にあげなければ税収の基本が崩れる。年金問題は過去の失策である。しかし本質的な議論がなければ禍根は次の世代に残すことになる。
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