【伊勢発】今年の正月は思わぬことで、大掛かりな神社めぐりの旅となった。全国には8万の神社があるという。日本の神のことを、八百万の神様というから、どうも、“八”という数字の語呂合わせのような気もしないわけではない。が、神事は突き詰めないであいまいなところが、なんとも気が楽で、良いと思っている。1月2日は昼過ぎ、熱田神宮に参拝した。参道は人の列でごった返す。着物姿がもう少し多いと、正月気分がもっと盛り上がったのではないか。といっても、当方は山旅用のフリース姿だから、正月の雰囲気を台無しにしている。3日は伊勢神宮に参拝した。混雑を避けるため、夕方の参拝とした。

▼さて、“神宮”といえば伊勢神宮をさす言葉なのだが、正式な参拝は外宮にお参りした後、内宮の順番だ。ところが、観光客の多くは、何となく内宮のほうが偉いようだから、外宮は次の機会にしよう、と考えてしまう。二つのお宮はご祭神が異なる。内宮は天照大御神、外宮は豊受大御神。役目が違うわけだが、遠い伊勢まで足を運んでいただいたわけだから、まあ“いいじゃないか”というのが、伊勢の人たちの旅人を迎える心意気だ。外宮には五穀豊穣の神である豊受大御神をお祭りする御正殿のほか、多賀宮、風宮、土宮といったそれぞれの役目を担う神様が祭られたお社がある。

▼内宮に足を運ぶ頃になると夕日が沈み、急に冷え込み始めた。それでも、人気の“おかげ横丁”は人で賑わっている。昔から毎日、参宮客を迎えてきた赤福の雨戸は締まったまま。その前で記念写真を撮る人がいる。なんとも寂しい光景ではないか。戦後、めっきり詣でる人が減った伊勢では、赤福のリードで、おかげ横丁ができた。今では修学旅行生がおかげ横丁で昔の気分を楽しみ、店員に「この近くに伊勢神宮があるんですか」と聞くというほど、修学旅行にこの地が組み込まれ始めている。賑わいがあれば商売ができる。商売が繁盛するとさらに人は集まる。伊勢神宮が黒子役でもいいではないか。この伊勢にも不思議な話がある。元伊勢神社というお社が京都府の福知山にあるのをご存じですか。この続きは来週に。(BCN社長・奥田喜久男)