旅の蜃気楼

家族への思いが溢れる結婚式に乾杯!

2008/06/23 15:38

週刊BCN 2008年06月23日vol.1240掲載

【新横浜発】扉が開き、光がさっと差し込んだ。純白のウェディングドレスがシルエットになっている。バージンロードに新婦の入場だ。「美しいな」。右手を父親の手に引かれながら、ゆっくり近づいてくる。今日の主役の登場だ。右手は新郎の手に引き継がれた。新郎新婦は一歩前に進み、輝きは一段と増した。ここで父親はひっそりと、自席に移動した。まったくこの瞬間は父親にとって複雑な心境だ。いや、私もかつて複雑な心境だった。だから、新婦のお父さんのことが気にかかった。こうして、わがBCNの社員・近藤篤君と貢紀さんの結婚式が始まった。6月15日、新横浜での出来事だ。

▼仲人を立てない結婚式は一般的になった。ひな壇に新郎新婦が並んだ。宴は新郎の挨拶で始まった。「遠いところから、御出席ありがとうございます」。新郎の実家は広島、新婦は和歌山だから、半数以上の出席者が遠方だ。新郎の話を聞きながら、今日の結婚式は新郎新婦が主催者なんだと思った。これまで、結婚式での主催者など意識したことはなかった。主賓の挨拶以降の展開には、結婚式の形もこんなに自由になったんだと、妙に感動した。挨拶に立ったのは、主賓2名と新郎新婦の縁を取り持った友人の計3名。たった3名だから、時間に余裕がたっぷりとある。11時に開宴して14時半までの間に新郎新婦の出会いと生い立ちの情報が、動画と静止画でスクリーンに流れる。その合間に両家のご両親が参加する、ケーキ入刀があって「今日は偶然にも新郎のご両親の結婚記念日でもあります」のナレーションが流れた。一瞬の静まりの後、会場は拍手と歓声に沸いた。お色直しは渋い紫色のドレスだった。席を立つ新婦新郎をそれぞれの姉、弟、妹がエスコート。嬉しそうな笑顔で家族が脇役という主役を演じている。実に素敵な光景だ。結婚式こそ身内に喜んでほしい、そんな新郎新婦の思いが伝わってくる。なんとも嬉しい気遣いではないか。

▼その夜、爽やかな結婚式に列席した喜びの余韻に浸りながら、久しぶりに家内と痛飲してしまった。わが子の新しい門出を見送ったご両家の親御さんの気持ちを推し量りながら…。(BCN社長・奥田喜久男)
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