【本郷発】新聞の切抜きを習慣にしている。Webの時代に切り抜きですか?と揶揄されそうだが、もう二十年来の習慣だから当分続けるつもりだ。毎日、新聞から気になる人物を切り抜きしている。ここ1週間の傾向は、スポーツ選手の切抜きが目立つ。オリンピックの開催が近いからスポーツ選手の話題が多いのかというと、そうではない。野茂英雄、三浦雄一郎、グレグ・ノーマンの3氏だ。それぞれに感動した。

▼野茂英雄の引退の言葉が耳に残った。「引退する多くの人は悔いはないというが、僕にはまだ悔いがある。でも周囲の人に迷惑をかけるので身を引く」という。未練がましい言葉だと思った。もっと、飾ってもいいのではないか。偉業を成し遂げた開拓者は心の中とは裏腹に、言葉を着飾って引退する。野茂は最後まで、懸命に野球の中に自分をぶつけたのだ。好きな雑誌に『Number』がある。その2004年4月29日発行の通巻600号が英雄秘話を企画している。8人のプロの中に野茂を選んでいる。「高校の練習のときから、あいつはいつも全力投球なんですよ。それは恐いぐらいに全力投球なんです」。同級生捕手・内山登さんの野茂評である。“全力投球”に着飾る余裕はないんだ。

▼三浦雄一郎さんの偉業は数々あるが、80歳で再び頂上に挑戦する宣言には、無限の志を感じた。「三浦雄一郎は三浦雄一郎だった」の言葉が好きだ。自分自身にもいろいろなときがあって、自らを納得できるときというのは意外に少ない。自分で自分を認めるときというのは最高の瞬間だ。次はグレグ・ノーマン。第137回全英オープンで最高齢で優勝するという歴史的記録を逃した人だ。86年、93年と2回優勝しているノーマンは最後の8ホールまで首位を保った。テレビ観戦では吐き気がしそうなほどの緊張感に襲われた。最終ホールではすでに結果は出ていた。ノーマンは「がっかり失望しながら、上がってきた」(朝日新聞)。しかし「夢を追うのに年齢は関係ない。私は結果として失敗したけれど、本当に望むならできるはずだ」(日本経済新聞)。“全力投球”は生半可なことではできない。「キミはどうだい」と自分に問いかけてみた。(BCN社長・奥田喜久男)