【山形発】好みの酒は旨い。『十四代』は美味しい。創業380年余りの伝統に裏打ちされた蔵人の真心を伝える酒として支持を得ていると、山形県酒造組合が作るパンフレットに記してある。美味しい秘密は何か?かねがね疑問に思っていた。

▼山形の名山・月山に魅かれて18年になる。今年は南斜面の姥沢から頂上を目指した。リフトがあって、往復3時間の、お気軽コースだ。青空にうっすらとした秋の雲が流れている。ニッコウキスゲが開花して緑の草じゅうたんに黄色が映える。この山は牛の背中のようにのびのびと広がっている。この景色が好きだ。どかーっとしている。

▼下山して山形に宿をとった。翌日、次の山を目指したが、天候が南から悪化している。残念だが、予定変更。思案した結果、駅にある観光案内所に出向いた。「確か、山形には『十四代』という美味しいお酒がありますよね」「ええ、高木酒造です。少しお待ちください」。そこでパンフレットを開きながら、蔵元の説明となった。山形駅から奥羽本線を北に向かう。村山駅で下車。タクシーに乗り込む。「運転手さん、高木酒造、わかりますか」「十四代ね。少し遠いよ。行っても蔵の中を見せてくれないよ。お酒も売ってないし」。それでも行ってみることにした。

▼20分ほどで到着。380年の風格を感じさせる蔵元だ。「こんにちは」と事務所らしき玄関で声を掛ける。女性が対応に出た。やはり蔵の中は見せてもらえなかったが、「どうぞ、どうぞ、お飲みください。そのお水でお酒を造っています」。この水なんだ。月山から続く葉山が育んだ水だ。「旨い。『十四代』の味がする」。そう感じた。さっそく、酒屋に行く。『十四代』のほか、大吟醸の『黒縄』、本醸造の『朝日鷹』がある。「1本ずつください」。ここから交渉が始まった。「720ml瓶の十四代は、朝日鷹を2本、1升瓶の黒縄は朝日鷹を4本一緒にお求めください」。抱き合わせ販売だ。東京まで発送をお願いした。お酒と本人がほぼ同じ日に自宅に着いた。葉山の水を並べて飲んだ。旨い! 水だ。秘訣は水だ。長年の疑問が解けた。ますます山形が好きになった。(BCN社長・奥田喜久男)