【本郷発】仲間が帰ってきた。こんなに嬉しいことはない。大手術を経て9か月ぶりに、BCNの専務・吉若徹君が会社に戻ってきた。昨年7月1日、定期健康診断の日だった。その朝、4人の役員がクリニックの受付に集まった。「おはよう」。それぞれ検診を受けて、早く終了する順に業務に戻った。ところが、翌日、吉若君だけにクリニックから電話連絡が入る。「再検査だって」。検診後、役員室に入ってくると、吉若君はいつものとおり茶化しながら、「ガンになっちゃった」と言って右腕をクルクルと回した。

▼入院は8月4日。この間、さまざまな不安と葛藤が彼の心の中で渦巻いていたと思う。が、実に淡々と段取りを進めた。「社内にはどう伝える?」。入院を控えた朝礼で吉若君はありのままに挨拶した。「2007年は東京マラソンの参加登録に当たりました。今年は食道がんに当たりました。入院します。必ず元気に帰ってきます!」。この挨拶に感動した一人の社員の音頭で皆が協力して千羽鶴を折り、見舞った。入院と同時に、闘病の業務日報が始まった。「スーフルって知ってますか」。初めて聞く言葉だ。ググッてみた。呼吸器官の筋肉を鍛える道具だった。全身麻酔から醒めたときの準備運動だ。手術は9月4日、執刀医は順天堂大学病院・副院長の鶴丸昌彦先生だ。肉親の方から手術の報告を受けた。成功した。11日、ICUから退室。日報は13日から再開した。毎日、毎日、吉若君は変化している。

▼9月24日、退院。その日の日報には「マラソンにはゴールがあるが、マラソンの練習にはゴールがない」とあった。退院後から続く治療への心構えだ。10月15日に出社の約束をする。この日は週刊BCNの創刊27周年記念日で、二人には思い出深い日だ。その10月15日、正午に再会した。照れくさかった。「3月2日から毎日、出ます」。その日がやってきた。朝礼で挨拶をした。「帰ってきました。今日から復帰します。千羽鶴から皆さんの元気をもらいました」。この週は長く感じた。6日夜、蕎麦がきで一杯やった。旨かった。(BCN社長・奥田喜久男)